Eyesworth

私、君、彼、彼女のEyesworthのレビュー・感想・評価

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)
4.6
【動物的ダイアリー】

シャンタル・アケルマン監督のセルフポートレート映画。

〈あらすじ〉
小さな部屋に若い女性が一人。彼女は外出することもなく、家具を動かしては居心地の良い空間を探すことに執心している。やがて彼女は手紙を書き始め、その傍ら裸のままスプーンで砂糖をむさぼるようになる。長く降り続いた雪がやんだある日、彼女は服を着て部屋を出る。路上に立った彼女はヒッチハイクを始め、男が運転するトラックに乗り込む。彼女は男としばらく行動をともにし、ある女性のもとへと向かう…。

〈所感〉
アケルマン監督の作品は初鑑賞だった。この人のことを全く知らなかったので、画面上のこの少しだらしない体型だが柔和さを感じさせるこの女性が監督だとは知らなんだ。ショットの切り替えが少ない長回しの作風のため冗長としすぎて印象だが、朝うたた寝状態で見るくらいには丁度良かった。序盤の砂糖爆食いはどうかしてるが、『A Ghost Story』でもルーニー・マーラが20分くらい黙々とパイを食べているだけのシーンを思い出した。あれはこの作品がオマージュ元なのかな。中盤に、ヒッチハイクで同乗した男とのダラダラとした情事があり。終盤で女同士で獣のように貪り尽くすプロレスもあり。この寝技の応酬が面白い。この作品は常に何か劇的なことが起きているわけではないが、それでこそおぞましい程の私的な日常であり、それをまざまざと目の当たりにする我々に罪悪感を生み出させる構造にも思えるが、それ故に出歯亀的な楽しさも得られる。彼女は自らを動かせる範囲内で精神の赴くままに生きているから、動物的な美しさがある。この世に完璧な自画像は無いだろうが、最もそれに近いポートレートだろう。
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