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故郷の便り/家からの手紙の眠人のレビュー・感想・評価

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)
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シャンタル・アケルマンの作品を観ていると、必ず一度は睡魔に襲われて、うつらうつらと夢と現の間を行き来してしまう。本作ももれなく睡魔という難敵を遣わしてきて、鑑賞前にアネトンを摂取していた僕はものの見事に1ラウンドでKOされた。

70年代NYの映像に合わせて、NY在住の娘に宛てた母親の手紙が途切れ途切れに朗読されるといった内容。画面固定の長回しで街中を駆ける自動車や地下鉄を映してみたり、今度は逆に移動する乗り物の中から過ぎゆく街並みを映してみたりと、大都会がまるで一個の生命体のように生き生きと映し出されていた。9.11以前なので当然ながらワールドトレードセンターも顕在。70年代のNYの空気感が存分に味わえる作品で、これは今からすると貴重な記録映像でもあるのではないだろうか。霞行くマンハッタンのショットも素晴らしかった。

それにしても、親からの手紙(現代で言えばLINEかな)ってどんなに愛情が籠ったものでも、ついつい返せなかったり、適当に返事しちゃったりするよね。母からの手紙の朗読が大都会の騒音に時々掻き消されるのが味わい深かった。
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