ツクヨミ

故郷の便り/家からの手紙のツクヨミのレビュー・感想・評価

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)
4.5
ニューヨークの街並みを眺めるドキュメンタリーなのに手紙というモノローグが少しばかり劇映画たらしめている。
シャンタル・アケルマン監督作品。特集"シャンタルアケルマン映画祭2023"にて鑑賞、"街をぶっ飛ばせ"と併映されていたので見てみた。
まずオープニングというか本作の全編がニューヨークの街並みを映すのみというほぼドキュメンタリーの仕様にアケルマンが本作の前年に撮った"ジャンヌディエルマン..."的な執拗なテイストを感じる。マジで固定ショットの連続でビシッとした構図の凄み、本作の次年"アンナの出会い"でも見られる左右対称+奥行きの美ショットの感じもあり、まさに"ジャンヌディエルマン"と"アンナの出会い"の良いとこどりと言ってもいいかもしれない。
だがそんなドキュメンタリー仕様にアケルマン本人の声で母親からの手紙のモノローグが入るテイストがなんとか劇映画のしがらみに繋ぎ止めている気がする。喧騒が凄いニューヨークの街並みで"帰ってきなさい"と喋るモノローグが融合するちょっとした切なさというか、今回も独特な映像表現に呑まれる仕様にクラクラしてしまう。本当に長回しであんな美ショットが繋がり紡がれるある意味"ジャンヌディエルマン"とは違う極限で幸福感すら感じる映像体験。
あとやはり前作"ジャンヌディエルマン"がけっこう固執した室内劇だったのに対し、今作は外に飛び出しそんな中でも固定ショットと長回しによる実験をしているというアケルマンのフィルモグラフィー的にも飛躍した作品だったのではなかろうか。まさにアケルマンの代表作として"ジャンヌディエルマン"に勝るとも劣らない感じでめちゃくちゃ好きだなー本作。ほんとに唯一無二の映画作家だよねアケルマン。
ツクヨミ

ツクヨミ