びこえもん

シン・エヴァンゲリオン劇場版のびこえもんのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

エヴァンゲリオン完結編。何年待ったことか、ようやく目の当たりにすることができました。

全体から言うと、『序破Q』で敷いた新しいレールの上を走り、その空気感を踏襲した上で、TV版終盤+旧劇場版(旧世紀版)を意識した展開・演出を多少盛り込みながらある程度収まりのいいところに着地した。というような所。

本当に意味があるのかどうかよく分からない匂わせ意味深描写が多いのは相変わらずですが、散々意味不明と評された『Q』に続く最終話としてはまぁまぁ綺麗に終わっていると思います。シリアス一辺倒に近かった『Q』ほどでもなく、前半は程々に『破』前半のようなコミカルな日常シーンが入っているのも安心要素として好印象。ロットが変わっても綾波は綾波、これまでの流れを汲むかのように似た言動が多く見られます。

マリの正体については貞本版(漫画版)を読んでいれば宜なるかな、そう驚くべきことでもありませんでした。旧来エヴァヒロイン論を二分してきた(否ミサトさんの事を忘れた訳じゃないが)レイとアスカのどちらでもない、新顔のマリが成長したシンジと結ばれたことを示唆するエンドは少々意外でした。終盤につれてアスカに傾倒していった旧世紀版に比べ大きくレイに重心を寄せた序破Qではありましたが、初めからこうするつもりでもないと敢えてヒロイン増員したりはしないのかもしれません。

ゲンドウについてはバイザを外したビジュアルに面食らいはしましたが(旧世紀版でもたいがい異形だったけども)、それ以上に心情描写が非常に細かく、従来作品以上に「ゲンドウとシンジは本質的に似た性格の父子である」ことが強調されています。「ユイ、どこだ?!」と狼狽する独白はあまりにも立木文彦すぎてイッテQ!始まるかと思ってしまった。

カヲル君については終盤の描写やゲンドウの「ピアノが好きだった」という独白からレイ≒ユイと同様にゲンドウとアナロジー的関係にあることが示唆されていますが、う〜んなんとも。

『破』の時点から一貫して「式波・アスカ・ラングレー」として登場していたアスカに関しては、新劇場版における彼女は綾波と同様に「造られた」エヴァパイロットであったことが明かされ、「惣流・アスカ・ラングレー」とは本質的に異なるキャラクターであることが分かりました。これは観る前に予期できてた訳ではないですが、考えてみればわざわざ名前を変えていて、かつ『Q』では通常の人間ではないことが示唆され、「綾波タイプ」というキーワードから他の「〇〇タイプ」も存在する余地が示唆されていたことを考えると、まぁ一番合点がいく真相ではあります。

トウジ・ケンスケ・ヒカリは大人になって健在であることが分かり安堵。特にトウジは元々はEVA3号機パイロットとなって片足切断の重傷(TV版)もしくは死亡(漫画版)という割と不憫なキャラクターでしたから、生きて成長してる所を観られたのは喜ばしい所です。演じる関智一の関西弁は依然としてネイティブの耳にはエセのままですがこの際目を瞑りましょう。食事の支度に関する態度など、言及こそ特にありませんでしたが『破』との対比が効いていて良いシーンでした。

残念な所を挙げるとすれば微妙な質感のCGの多用。特に巨大綾波は旧劇と同様に絵で描いた方が良かったのでは……と思います。それと最後の各エヴァを全て槍で貫いてゆくところ。なんか矢継ぎ早に突然出てきては爆散していくみたいなのが大真面目なのにちょっとコミカルに感じられてう〜んって感じだった。百歩譲って仮設5号機とかMark.6は良くてもなんかよう分からん雑魚EVAまでここに入れる必要あったか……?というのが正直な所感。

今に始まったことではないですが、演出面でのエロスの盛り込み具合は相当なものがあります。以前イラストレータのさいとうなおき先生がYouTubeの動画で「エロ描写は大真面目なシーンに入れればエロくても許される(意訳)」と説き、例として『天空の城ラピュタ』のシータを挙げていましたが、まさにそれと同じことがこの映画では数多くなされています。これは大真面目な会話をしながらヒロインの素っ裸着替えシーンを出すような明白な部分だけでなく、銃を手に涙を流して地にへたりこむ鈴原サクラの尻を後ろから画面いっぱいドアップに落とすとか、成長して娘をもうけた洞木ヒカリの授乳シーンとか、細かい所にも結構入り込んでいるように見えます。

全然話が変わりますが演出面でもう一つ言うと、ヴンダーから射出される誘導弾は、誘導弾という名前こそあれ見た目は明らかに戦艦の形をしています。自ら目標目掛けて移動することから乗り物の形を与えていると解釈することもできますが、これは明らかに『シン・ゴジラ』の無人在来線爆弾とやりたいことが同じで、監督の嗜好が色濃く出ているな……と感じます。

長々書きましたが1回の視聴で感じたのは大体こんな所か。エヴァお馴染みのサブリミナル的演出や細かい描写を拾いきれていないので、またいずれ見返したいところです。