喜連川風連

シン・エヴァンゲリオン劇場版の喜連川風連のレビュー・感想・評価

4.8
サヨナラ、平成。セカイ系。

他のエヴァシリーズを全て回収し切った庵野監督に拍手!
ギリギリの説明セリフ。
ゲンドウくんよく喋ったね。

コアファンからしたら丁寧すぎるだろうが、謎を残すことで続いてきたエヴァシリーズに決別する意思を感じた。

あらゆる可能性、選択肢が存在し、そのたびにナギサカオルが現れ、テレビ版シンジを救えず、もう一度第1の使徒として、やり直す、その円環の理がようやく終わった、、、

シンゴジラ以降の庵野監督の覚醒たるや!

艦隊決戦からロボット活劇までありとあらゆるSFアニメーションへのオマージュ!愛!感動!

ヤマト作戦の名の通り、ラストシーンはさらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち。

ミサトはヤマトと共に特攻し爆発四散。
沖田艦長!古代艦長への敬意!

無人在来線爆弾の次は、無人大和型戦艦爆弾ですか!庵野さん!笑

わざわざ護衛艦にせずに、第二次世界大戦型の戦艦なのがまた熱い。

実写を織り交ぜたカットは、シンゴジラの制作経験が存分に発揮され切れ味抜群。

ドアのショット、細かい実景のインサート。
部屋のシーンで電話を手前にかませて、抜けで会話を描く実相寺アングル。

加えて元来アニメが苦手としてきた3D描写、その全てが織り交ぜられ圧倒される。

素人が生半可に登れない娯楽アニメーションのエベレストとして我々の前に立ちはだかる。

アスカがシンジを殴るシーン。
精神が錯乱し、フラフラするシーン。
ハリウッド映画のようにカメラが回り込むアニメーションに大きな可能性を感じた。

内面に閉じこもり、他者とATフィールドで隔てる。その象徴として、存在していたカセットテープを父親に返す。

精神世界として登場していた古い電車のモチーフは父親の精神世界だったのか。

そして、綾波レイは社会との関わり方が分からなくなった引きこもりたちへの社会復帰プログラムだ。

きっと誰か必要としてくれる人がいる。
好きになってくれる人、仕事をくれる人がいる。人間、土に帰って、土を触って見えるものがある。

ラスト。いつものように視聴者に物語への没入を決して許さない絵コンテの投入。

決してこの映画に逃げることを許さない。

意思と知識への欲求、他者への愛・慈しみが人類を発展させてきたのだ。

背景美術は、戦後、荒廃から復興した昭和中期の日本を見ているようだった。

機械文明が手触りをもって存在していた最後の時代だったと思う。

そして食い物が1番出てきたエヴァンゲリオンではなかったか?

人の温もりや生命の手触りから遠ざかり、あらゆる質量が軽くなる中、示された土の香り。

自殺者が増え、精神の病で死ぬようになった現代で生き方を教えてくれる黙示録のような映画。

涙は自分しか救えない。
閉じこもって、死ぬ勇気もなければ生きる勇気もない青春に送る新しい聖書!

あんのおおおおお!!!!

気持ち悪さを失った代わりに、エヴァンゲリオンは何を手に入れたのだろうか。
喜連川風連

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