よーだ育休中

シン・エヴァンゲリオン劇場版のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

5.0
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ー AYフィールド、全開。


WILLEがパリでカチコミ作戦を展開。NERVの妨害を跳ね除け、コア化したパリ旧市街エリアの復元に成功した彼等は、ユーロNERVに残された物資を調達。来る最終決戦に向けて戦支度を整える。一方、エル結界密度の低い地点を目指しコア化した地表を彷徨うアスカとシンジは、二人についてくる仮称アヤナミと共に、ニアサードインパクトを生き残った人々が暮らす第三村へと身を寄せる。


◆おやすみ (ネタバレ有)

未だに理解の及ばない部分は多いですが、今作で新劇場版における世界の成り立ちが少しだけわかったような気がします。元々旧シリーズとは世界線そのものが異なっている印象を受けてはいましたが、成程『リビルド』とは言い得て妙なり。

旧シリーズでは《黒き月》と《白き月》が地球に飛来したことで、黒き月に由来する《使徒》と白き月に由来する《リリン》が『地球の占有権』をめぐって争っていると理解していました。

新劇場版では、元来リリン(人類)に提示されていた運命は『使徒に滅ぼされる』もしくは『使徒を殲滅し、知恵を失い、永遠に存在し続ける神の子と化す』の二択であった様です。《知恵の実》を食したリリンそのまま地球で生きていく道はないという、旧約聖書のパラダイス・ロストを彷彿とさせるような世界でした。

後者を選んだSEELEは、セカンドインパクトによって《海を浄化》し、サードインパクトで《大地を浄化》し、リリスとの契約(詳細不明)に従って使徒を殲滅し(ここまでのシナリオが『Q』までに描かれている)、フォースインパクトで《魂を浄化》した上で、リリンの魂が還るガフの扉を開くことを目指しました。これがSEELEのシナリオによる人類補完計画。

*浄化=コア化「人の立ち入れない、原罪の汚れなき世界」

ここからさらに《ネブカドネザルの鍵》を用いて「この世の理を超えた情報を自分の体に書き加える」ことで、ガフの扉の向こう側にある《マイナス宇宙》まで辿り着き、《エヴァンゲリオン・イマジナリー》と《ゴルゴダ・オブジェクト》によって《アディショナルインパクト》を引き起こし、最愛のユイと再会することがゲンドウくんの人類補完(神化)計画。であってる?この辺理解が追いつかなくて。

「問題は無い(キリッ)」って言いながら飛び散った脳みそを拾って自分の頭蓋に戻す画に関しては問題大ありだっていうことはわかりました。


◆おはよう(ネタバレ有)

NERVはバチカン条約を無視して軍事転用させたエヴァを量産していました。ニアサー+サード(フォース?)で人類のほとんどが浄化されてしまったのだから多国間協定なんてあってないようなものでしょうけど。

*前作で急に登場した《エヴァンゲリオン・インフィニティ》は、ニアサーで浄化された人類が首なしエヴァになってしまった姿。人類補完の一歩手前。ということ?

『Q』ではコード4A、4B、4Cネーメズィスシリーズが登場しました。今作ではパリ市街戦で航空特化タイプの44A、陽電子砲装備の陸戦用4444C、電力供給特化型44Bなどさらに多彩なNERV所蔵の《エヴァ擬き》が登場しました。使徒の仮面があしらわれていたりコアが存在しているのは、S2機関を内蔵しているからでしょうか。何にせよ、推しが鼻歌交じりに無双しているシーンは可愛すぎて眼福でした。エッフェル塔を引っこ抜いてぶっ叩くだなんて腕白すぎる。

WILLEがNERV本部へと強襲を仕掛けた《ヤマト作戦》。アスカの新弐とマリの改八がカルヴァリーベースへと落下しながら夥しい数の七号機を蹴散らしていくシーンも胸熱でした。二人揃ってATフィールドを展開して突っ込む姿はカッコイイ。新劇場版はATフィールドの汎用性がかなり高くなってるのも見所。

『破』で弐号機が披露した裏コード《ザ・ビースト》も驚きでしたが、今作でアスカと新弐がみせた《エンジェル・ブラッド注入(アスカの使徒化)》も見応えがありました。新劇場版ではアスカも弐号機もサプライズ演出を担当してくれているのに、ものの見事に残念な結果に終わってしまっているのは気の所為でしょうか・・・。

今作は戦闘シーン以外にもCGによるぬるぬるっとした動きが特徴的でした。新劇場版は映像技術の進歩によって、90'sを代表する名作アニメ『エヴァンゲリオン』が美しくリビルドされたことも見ていて楽しい要素でした。


◆ありがとう(ネタバレ有)

人為的大災害セカンドインパクト。そしてニアサードインパクト。人類絶滅級の大打撃を受けてもなお逞しく寄り添って生きる人々の姿に胸を打たれました。

知恵の実を食べた人類(リリン)が地球上で生き延びる運命はない事が示唆されていた今作。一個体で完結している生命の実を食べた《使徒》とは異なる不完全な人類。ですが今作では、個ではなく群であることの強さ。人類の叡智の結晶である科学技術の力が存分に描かれていたと感じます。リリンの特徴(群体であること、知恵の実を食したこと)を長所として描くのは旧シリーズでは見られなかったパターンではないかと。

第三村という共同体は、前時代的な暮らしではありますが、だからこそ皆が責任感をもって自身の役割を全うし、暮らしを円滑に回していました。地球のエコシステムの縮図のようであり、旧シリーズのテーマになっていた《リビドー》に溢れていました。死にたみMAXのデストルドーシンジくんには辛かったろうね。どうしてみんな優しいんだよ!

エル結界密度の高いコア化した地表を元に戻す研究も進められいて、封印柱によって《ハイカイ》の脅威も退けられています。リリンの努力と化学の力が描かれており、このシーンで加持リョウジと葛城ミサトの息子が登場するのも意味があったと思います。リリンが脈々と子孫を増やして繁栄する力強さが溢れていました。

人的災害によって生命が存続できなくなった地球を元に戻そうとする姿は、SDGsが声高に叫ばれる現代社会と重なる部分もありました。

*そもそも《エヴァンゲリオン・インフィニティ》が《ハイカイ》として「最近になって動き始めた」のは封印柱の影響で周囲のエル結界密度が下がったからでは?


◆さようなら(ネタバレ有)

︎︎︎︎︎︎☑︎ 式波・アスカ・ラングレー

旧シリーズの《惣流》から《式波》としてリビルドされたアスカ。旧シリーズ程に強烈な自尊心と承認欲求は無く、マイルドなツンデレちゃんとしてリビルドされていました。(とても良いです。)

廃人化すること無く、闇深い一面は無いものと思いきや、三号機の起動実験の際に左目を第九使徒に侵食されていたようです。シキナミシリーズのパイロットとして大量生産されていた事実も明らかになりました。何これ、下手したら旧作よりも闇深いんじゃ・・・。

『破』から『Q』までの14年間で精神的に成熟した《見た目は子供、頭脳は大人》なアスカは、きちんと現実を受け入れているようでした。最終的に《Air / まごころを、君に》のラストと同じようなシチュでグッドエンド(だよね?)を迎えられたのですごく良かったです。おめでとう。


︎︎︎︎︎︎☑︎ 綾波レイ

第三村での共同生活を通して、そっくりさん(初期ロット)が『破』での綾波と同じように人の心を学んでいく姿に心がぽかぽかしました。

『破』で初号機に取り込まれた綾波が14年ぶりに登場したシーンは鳥肌もの。ずっと「そこ」にいたのか、健気すぎる。ロングヘアでツバメ人形を抱いてる綾波×アヤナミも新鮮で良き。

『破』『Q』でシンジくんは綾波を選んだのだと思いきや、あっさり『ここじゃない綾波の幸せ』を勧めるシンジくん。14年間の綾波の健気な頑張り(碇くんがエヴァに乗らなくてもいいようにする)を想うとかなしみ。

新劇場版では『碇ユイ』が『綾波ユイ』としてリビルドされていました。レイはユイをベースに造られていることが強調されていたのは、血縁者であるとして綾波ルートを潰すためだったのですか?


︎︎︎︎︎︎☑︎ 渚カヲル

カヲルくんまじほむほむ。

カヲルくんまじ長門ユキちゃん。

『序』のカヲルくん登場シーンをカヲルくん目線で映したカットに絶望した。円環の元が『碇ゲンドウ』っていうことは、生命の書に名を連ねているカヲルくんとシンジくん、そしてゲンドウくんがループしてる(もしくは分岐した世界線へリープしている)のかな。カヲルくんは使徒だから記憶を保持していたし、シンジくんもエヴァパイロットとして色々いじくられてそうだから『過去』の記憶思い出せたってこと?

細かい部分はわからず、何となくお察し程度の状態だけど、渚司令とリョウちゃんの掛け合いはなんだか泣きそうになりました。


︎︎︎︎︎︎☑︎ 真希波・マリ・イラストリアス

彼女だけが新劇場版から登場した主要キャラクターだったので、ブレイクスルーを担当するのは彼女だったというわけですね。明言はされていなかったけど、貞本エヴァの通り冬月の研究室メンバーだったということで良さそうです。

基本的に癖強めで鬱度高めなキャラクターばかりのエヴァワールドの中で、明るくて軽そうなノリなのに芯はしっかりしている所が大変好ましかったです。眼鏡だし。坂本真綾様ボイスだし。

*冬月から《イスカリオテのマリア》と呼ばれていましたが、どうせなら悪龍タラスクを成敗したベタニアのマルタの妹《ベタニアのマリア》の方がしっくりきたのに。ベタニアベースで仮設五号機起動してたし。


︎︎︎︎︎︎☑︎ 碇シンジ

新劇場版では双極性感情障害なのかっていうくらいに躁状態と鬱状態を繰り返していたシンジくん。『生きることは辛いことと楽しいことの繰り返し』を体現してくれていたのかもしれません。

『涙で救えるのは自分だけ、
だからもう泣かない』

イマジナリーではなくリアリティーで立ち直ったシンジくんは、ゲンドウに音楽プレーヤーを返し、ミサトさんが決死の想いで繋いだ《ガイウスの槍》を受け取ります。


時間も世界も戻さない。

ただ、エヴァが無くても
いい世界に書き換える。

新しい人が生きていける世界。

ネオンジェネシス。


ラストの宇部新川駅。実写とアニメを融合させた演出はメタっぽくて面白かった。庵野監督がリビルドした《エヴァンゲリオン》の世界の中で、シンジによってリビルド(書き換え)された《エヴァが無くていい世界= 現実世界》の様なメタ的円環構造と、宇多田ヒカルの主題歌が心に沁みる。


ー さようなら、すべてのエヴァンゲリオン



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あちゃんとアニメを観よう企画

圧巻。圧巻のラストでした。

何が何だかよく分からないのに何故だか胸を打たれる。あの鬱々とした旧シリーズを手がけた庵野秀明が生み出したものとは思えないほどに爽やかで後味の良い仕上がり。

今回あちゃんとアニメを観よう企画が無ければ観ることは無かったかもしれない今作。声かけてくれた事に心から感謝です。僕の中のエヴァンゲリオンも無事に完結することが出来ました。おめでとう!ありがとう!