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調子の狂った子供たちのsのレビュー・感想・評価

調子の狂った子供たち(1964年製作の映画)
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家出をする14歳の男女、パスカルとクリスティアーヌ。両親に妊娠したことを伝えるには?という作文の解答例を読んで笑い合う二人のあどけなさが可愛い。盗んだ2CVに乗ってどこまでも行けそうな勢いがありながらも、結局家へ帰りたくなる気持ちもあるのは若さゆえのこと。城のような家の中で身を寄せ合いながら、姿勢を正して一心不乱に踊り続ける二人の長回しのシーンはメリーゴーラウンドの白馬のような美しさだった。そんな美しさに見惚れていたのも束の間、その後の森での取っ組み合いの喧嘩(ジャック・ドワイヨンの『ラブバトル』を思い出す)は生々しさと血気と狂気が迸り、持っていた斧を何度も振り翳すショットはあまりにも辛いものがあった。
多感な時期は反抗期とも重なることが多く、同時に波が押し寄せてきた時のエネルギーの強さ、取り返しの付かなさというのは私自身もよくわかっている。途中で親(大人)目線の語りが何回かに分けて挿入される構成も良く、最初の大人が口にしていた、"自分が人生のどこにいるのか分からない人"という言葉がずっと胸に残っている。
広い草原に力無く寝そべり、「何も感じられない。俺は空っぽだ。死ぬほど退屈だ」と繰り返し口に出すパスカルのことを、何も言わずに上から抱きしめてキスをするクリスティアーヌ、という構図がものすごく良かった。退屈しながら生きてきた、空っぽで不感症な二人のための数秒間。

追記:
映画前のインタビューにて、どこの学校を出たのかなどの自己紹介に対して「特にない。私は19歳です」と返したり、「なぜ映画を作るのか」という質問に対しては「分からない。退屈していたのかな」などと返す19歳のガレルがパスカルと重なる。
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