敬愛する詩人長田弘氏は、『人生の特別な一瞬』のあとがきで、次のように記している。
人生の特別な一瞬というのは、本当は、ごくありふれた、なにげない、あるときの、ある一瞬の光景にすぎないだろう。そのときは少しも気づかない。けれども、あるとき、ふっと、あのときがそうだったのだということに気づいて、思わずふりむく。(中略)特別なものは何もない、だからこそ、特別なのだという逆説に、わたしたちの日々のかたちはささえられていると思う。人生は、完成でなく、断片からなる。
この映画の登場人物たちは、まさに、そのときは、“少しも気づいていない”。でも、映画を観ている私(たち)は、この時間に限りがあることに、今、彼らが特別な一瞬を重ねていることに、“気づいている”。バカ騒ぎしている彼らを見て切なくなる、このギャップがたまらない。