わたふぁ

フェアウェル さらば、哀しみのスパイのわたふぁのレビュー・感想・評価

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「車の鍵を閉め忘れたかもしれない」と妻に告げ、男が劇場から出る。車に戻り、おもむろに運転席に座って、ふぅと一息。
対向車のライトに照らされたその時、後部座席に座る黒い人影が…!後ろ…後ろ…!やっぱ鍵開いてたんじゃん…!
となる最初のシークエンスだけで心はガッツリ鷲掴み。

それ以降は、今回は監督業ではない俳優・エミール・クリストリッツァの強面に釘付けになる。目つきが悪いしデカくて恐いが、どこか懐の深さを感じる人だった。

クリストリッツァ扮するKGB幹部の男(コードネーム:フェアウェル)と、それに協力するフランス人青年の物語を中心とし、ソ連崩壊のきっかけを作ったと言われる“フェアウェル事件”を描いている。

来るか…来るか…!のスリラー的なタイミングでは決して来ず、意外なところでバツっとシーンを切ってハッとさせたりして。じりじりと青い炎を燃やす静かなスパイ映画でした。

長回しによる「緊張」と、気を抜いた頃の「不意打ち」の緩急を作るのがうまい監督です。
新作を求む!クリストリッツァ監督も!