みかんぼうや

ぼくの伯父さんのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)
3.7
初めてのジャック・タチ挑戦はやはり彼の代表作と言われている本作。なんともオシャレ!ほのぼのとしているのに芸術的。「映画はストーリー重視」な自分ですが、本作はストーリー自体よりも、そこに登場する人物の動きや、建物、色彩豊かな映像、という映像そのものの面白さに魅せられ、「映画とは映像で表現されるからこそ面白いのだ」という極めて当たり前ながら映画という芸術・エンターテインメントの根幹に気づかされた。

特に印象的だったのが、人物の表情に寄った映像が全くないこと。終始全体を俯瞰して見るような構図で、人物の表情なども遠くからしか分からない。おそらく上半身アップすら一度もないかもしれない。これが映像の面白さに直結していて、バックにある独創的な建物等も含め、まるで動くミニチュアの世界を眺めているような感覚が生まれてくる。

この箱庭的な空間描写がユニークかつ魅力的。そこに加え、コミカルで小気味良い登場人物(主に主人公のユロ叔父さん)が可愛らしくも面白い。基本的にクスッと笑う系のコメディ要素が多いが、ポンプ工場のソーセージ事件は爆笑でした。

ストーリーらしいストーリーはあってないような作品ですが、たまにはあまり考え過ぎず、純粋にそこに映る映像の面白さや芸術性を楽しむこういった作品を観るのも、感性が磨かれ、気持ちも楽になって良いですね。
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