アリ

子供たちの涙 日本人の父を探し求めてのアリのレビュー・感想・評価

3.8
太平洋戦争中、現在のインドネシアにあたる地域で軍属日本人と現地女性の間に生まれた「インドネシア系オランダ人である日系二世」たちのドキュメンタリーです。

今も月一回は日本大使館前で元抑留者への補償を求めるアピールが行われるほど、オランダでの日本は「かつての敵国」の面影を背負っているようです。
そのため日本人である実父のことを長い間隠されていたり、日系だと知られればいじめられ、養父に虐待を受けるなどのケースも。
一方で父親の側も日本に家庭を持っていたりして、現地で生まれたこどもたちのことはタブーとされてきました。

映画の中では、三人の二世から父親のことを知りたいというそれぞれの思いと、これまでの人生が語られます。
長く不可視にされてきた立場ゆえに政府のサポートも期待できず、ただジャワへの出征経験を持つ内山馨さんという方が独自に彼らの父親を探す手助けをしています。
手がかりが限られるため、仮に発見できても家族が「証拠がない」と拒否したり、必ずしも二世たちの思いは日本へ届くと限りません。

私などは「無責任な親、サイテーだな!」と簡単に思ってしまいますが、砂田監督は元日本兵へのインタビューを重ねてきた経験もあり、父親たちを断罪するような作りにはしていません。
父親がどんな人物であれ自分のルーツを知りたいという二世たちの願い、そして新しく繋がっていくひとびとへ優しく寄り添う映画でした。

この作品が伝える事実が、ひとりでも多くのかたに届くことを願います。
ヒューマンドキュメンタリー映画祭•阿倍野にて。
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