すごく身近なものが案外最も遠い未知の空間とつながっているのかもしれない、という面白さ。
団地には幼い頃住んでいたことがあって、
団地の人間関係の近さ、メンドくささが“ああ、こんな感じだよね”と、良くも悪くも素直に描かれているように思う。
団地に越してきたとある夫婦の過去が次第に少しずつ明らかになっていく、
その淡々とした描写はとても好き。
その過去は、社会的な“事件”と自分の人生の現実に起きた出来事が、
ひとつのことであるはずなのにどちらもうまく消化できないままに時は過ぎ、気が付いたら“事件”としては世間に忘れさられ、何ひとつ悲劇は解決されないまま問題として残り続けた。
このエンディングは、ひとつの“救い”なのかもしれない。
“きっと何処かにパラレルワールドが存在しているはずだ”という、夢。
私はこの不可解さの残るエンディングが嫌いじゃない。
良いじゃない、
あったはずのありふれた幸せを返して欲しい、
そんな風に願うことはけして悪いことじゃない。
辛いことが起きて、こんなに大変だったけど、私は乗り越えました的な物語ばかりじゃ逆にしんどいよ。
つくりものの中でくらい、その人の願う本当の幸せを叶えてくれたって良いじゃないか。
たとえ現実にはあり得ないことでも。