くまちゃん

バーフバリ 伝説誕生のくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

バーフバリ 伝説誕生(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「マガディーラ勇者転生」と比較してもその規模、クオリティが著しく進化していることが観てとれる。
1500ftはある滝やマヒシュマティ宮殿など、明らかにCGであることは認知できるはずなのに世界にマッチしすぎて違和感が生まれない。ハリウッドや日本では恐らくチープに感じてしまう映像技術の数々がインド特有の雰囲気により最高純度のエンターテイメントへと昇華されている。

シヴドゥの出生に関わる冒頭。赤ん坊を死守しながら果てるシヴァガミの姿は神秘的な神話の始まりを示し、観客の興味を一気に引き付ける。

滝の上で出会うレジスタンスのメンバーアヴァンティカ。彼女は強く逞しく、孤独である。シヴドゥはそんなアヴァンティカへアプローチをかけ親密になっていく。憤怒の炎を宿す彼女の心には愛が枯渇していた。それを融解させるシヴドゥ。純粋なラブストーリーとも取れるが、アプローチの方法も、女性としての喜びと愛を結びつけるのも前時代的な印象を受ける。もっとも今作は時代劇であり、ステレオタイプなヒロインがインドの国民性に合致していると言われれば仕方がないのかもしれないが。
シヴドゥが密かに施すボディペイントは彼女たちの活動に対する弊害となり、実際アヴァンティカはそのせいで任を解かれそうになる。

しかし、シヴドゥとアヴァンティカの絆の象徴たるボディペイントが2022年公開作「R・R・R」では戦う理由として反転されているのは評価できる。

作中に登場する部族、カーラケーヤはキリキ語を話す。
現実世界に存在しない架空の言語である。キリキ語はマダン・カールキにより創造され、750単語と40文法により構成される。さらにキリキ語の辞書を作成し、撮影状況に合わせ新たな言葉が必要になった際はその場で創られた。設定も細かく、文法上意思表示と所有権を示す場合は吸着音を発する。ちなみに「血に飢えた蛮族に謝る概念はない」との理由から謝罪に関する言葉は作成されていない。
映画のために言語を作成したと言えばジェームズ・キャメロンの「アバター」を思い出す。
同作内にてパンドラに居住する種族ナヴィの共用言語ナヴィ語を作成している。
奇しくも「マガディーラ勇者転生」と「アバター」は公開年が同じであり、どちらも映像技術が高く評価された。
もちろん、両作を比較する事はできない。映画史を塗り替えてしまった「アバター」に対し「マガディーラ勇者転生」はヒットの規模がまだ大きいとは言えないからだ。
しかし今作では映像技術がさらなる発展を遂げ、言語から創作してしまう熱量は監督S・S・ラージャマウリのハングリー精神そのものであり、形容するならインドのジェームズ・キャメロンと言っても差し支えないだろう。
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