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メーベルの窮境のくりふのレビュー・感想・評価

メーベルの窮境(1914年製作の映画)
3.5
【“アルコール先生”マジヤバイ】

実質、チャーリーの“放浪者”スタイルが登場したのは本作が初らしいが、単にその記念碑としてではなく、チャップリン当時のヤバさがキチンと刻まれているのがスゴイと思う。

愛される弱者ではなく、ホントの鼻つまみ者キャラに徹しているんだよね。

酒を飲んでからのビミョーな挙動不審ぶり。ナニしでかすかワカラン危うさは、デヴィッド・リンチの映画に居てもおかしくない。

タモさんの歴史でいえば、いいともで人気者となるずっと前、イグアナ芸やってた頃の芸風に近いかと。

この感覚が、100年以上前のフィルムに刻まれていたことに、個人的には驚きと感激ありあり。www …再見してよかった。

とはいえ本作、タイトル通り、当時の大人気コメディエンヌだった、メーベル・ノーマンドの主演作。自ら監督もしている。

まだ駆け出しだったチャップリンは、笑いを取るための脇役だったんだよね。

しかし、製作のマック・セネットは彗眼だった。

ホテルロビーの撮影にて、チャップリンのマイムは大勢の視線を引き寄せたそうだが、監督の反対を聞かず、切らず、すべて完成フィルムに残したそうだ。

“挙動不審マイム”’も、そのおかげで100年過ぎた今でも見られるんだろう。

メーベルの魅力は、時代が変わり過ぎてどこがよいか最早、わからないし、物語の要“寝室でドタバタ”も、当時よくあるパターンだったのではと。

しかし、チャップリンの在り方にはいま見ても、刺激がある。これって映画史的にスゴイことだと改めて、実感させられましたよ。

<2024.5.8記>
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