囚人13号

チャップリンの総理大臣の囚人13号のレビュー・感想・評価

チャップリンの総理大臣(1914年製作の映画)
3.1
チャップリンの初期作品において、またデビューの1914年に絞って重要作と見なされているものを列挙してみると『成功争い』『ヴェニスの子供自動車競走』『メーベルの窮境』『恋の二十分』『醜女の深情』が最重要作、『活動狂』『多忙な一日』『両夫婦』『新米雑役夫』『パン屋』と本作は第二重要作となるだろうが、中々『総理大臣』に言及されることは少ない。

チャップリンが監督でもない、(もちろん身分詐称の主題は非常に興味深いのだが)一見すると凡庸なこのキーストン喜劇には中盤に一瞬、手の届かぬ女性に心を寄せるキャバレー給仕のメロドラマの如く繊細な表情が焼き付いている。最低画質では決して分からなかった、尻を蹴られて現実に引き戻される感傷的なこの一瞬には、下劣なスラップスティックに従順してきた男の人間性が初めて垣間見える。
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