何度も途中でストップボタンを押そうと思いました…とても辛い…でも観て頂きたい作品でもあります…。
ハナ・マフマルバフ監督作品…初鑑賞…弱冠19歳の時の作品です…。
父はモフセン・マフマルバフ監督…そして姉は『りんご』のサミラ・マフマルバフ監督…マフマルバフ一族、凄すぎます…。
原題は『仏陀は恥辱のあまり崩れ落ちた』…この仏陀とは2001年、タリバンの手により破壊されたアフガニスタン中部バーミアンの歴史的な仏像…。
父であるモフセンの著者に書き記された言葉から来ているそうです…。
「罪なき人々に起こるあまりに多くの残虐行為や暴力を目撃し、仏像はそれを恥じて自ら崩れ落ちた…」
今作は所謂イラン映画によくある「はじめてのおつかい」…ですが想像を遥かに超えたおつかいでした…。
冒頭、仏像の強烈な爆破シーンに緊張感が走ります…。
その現場近くの石の洞窟に住む6歳のとっても愛くるしい少女バクタイ(ジャケ写の子)…彼女のおつかいとは…
ただ、勉強したいだけ…学校に行きたいだけ…
隣に住むアッバスという少年の知恵を借り、バクタイは勉強に必要なノートと鉛筆を買いに出かけます…。
しかし6歳の少女にお金は無く、小さい両手に卵4つを持って買いに行きます…そこで四苦八苦…彼女なりに知恵をつけていく過程も観ていて面白いです…。
なんとかノート1冊は手に入れましたが…鉛筆は買うことが出来ません…そこでバクタイが考えたのは…母親の口紅!!
準備完了…アッバスと一緒に喜び勇んで学校へGO!!…
〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜
しかし、ここから物語は一転…
バクタイが向かった学校は男子校…女子校は川の向こう側…呆気なく追い出されます…。
そしてバクタイはひとり女子校に向かうことになり、その途中で数人のいじめっ子たちに囲まれます…。
詳しい内容はとても悍ましくて書けません…がそこでの描写は…タリバンを真似た"戦争ごっこ"…。
子供の遊びとしては生々しく残酷でショッキング…とても観るに堪えないシーンが続きます…。
ただ、子供の遊びは大人の暴力行為が生み出したもの…子供たちには何の責任もないはず…長い戦争の続くこの国では、彼らが生まれた時から常に戦争がすぐそばにあったのですから…。
でも、どこかで止めなくちゃ…しっかりと教育がなされなければ…彼らが大人になった時はどうなっているのだろう…。
なんとか逃げ出したバクタイ…ようやく女子校に辿り着くも教室は生徒でいっぱい…そこで口紅を手にすると…それを取り合って大騒動!! "お化粧ごっこ"が始まります…。
唇とほっぺまで真っ赤っ赤にした少女たちが堪らなく可愛くて…束の間ほっこり…しかしまた、先生に追い出されてしまいます…。
アッバスと合流しふたりでの帰り道…またしても…。
その時のアッバスがバクタイに叫んだ言葉が胸を突きます…そしてバクタイのとった行動は…??
これまで観たイラン作品の中でも1番苦しい作品かも知れません…しかし、アフガニスタンの子供の姿、人々の暮らし、教育のあり方…子供を取り巻く実情も浮かび上がってきます…。
何よりバクタイを演じた少女…思いを決して諦めない健気で前向きな姿、力強い瞳がとても印象に残ります…。