かるまるこ

僕だけがいない街のかるまるこのレビュー・感想・評価

僕だけがいない街(2016年製作の映画)
2.6
「バカなの?」加代の口癖なのか、劇中、事あるごとに主人公にそうツッコんでくれるのが救い。
29歳の意識のまま10歳に〈リバイバル〉しているはずなのに、行動がとても大人とは思えない。特に策を弄することもなく、犯人を追い詰める際もまさかの正面突破。
こういうのは「見た目は子供、頭脳は大人」にした方が落差が出て面白いと思うのだが、それだと某コナンみたいになっちゃうからカブらないように本当にバカな設定にしたのかもしれない。
なのでミステリとして観るのはかなりキツい。

ただ、石田ゆり子を主人公の母親に配したことを考えると(藤原竜也の母親には全然見えない!)、作り手の狙いは別の所にあると思う。

とにかくこの映画、子役達の演技が素晴らしいのだが、〈リバイバル〉先の過去(1988年)のシークエンスだけまるで別の映画か?と思うくらいトーンが違う。演者とスタッフの本気度が違う。石田ゆり子も主人公の子供時代だと上手くハマっている。1988年を軸に役者がキャスティングされていることからみても、作り手が本当に描きたかったのは、2006年の現在でも、犯人探しでもなく、加代に対する虐待問題だったんだと思う。この作品が持つメッセージからみてもおそらく間違いないと思う。

虐待というただでさえセンシティブなテーマをエンタメでやるには、バカな主人公や、タイムリープという救い、コントみたいな現在のシークエンスがどうしても必要だったのだろう。
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