TakashiIbayashi

無伴奏のTakashiIbayashiのレビュー・感想・評価

無伴奏(2016年製作の映画)
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上映中に何度、腕時計を確認しただろうか。

別に粗探しをするつもりで観ているわけではないのだが、とにかく作り手側の事情が透けすぎて見えるのだ。

「主演女優は事務所の都合で乳首を出せないから、不自然なポーズなんだろうな」
「昭和40年代を再現しなければいけないから、カメラの動きに制限があるんだろうな」
「狭い屋内撮影が中心で、立体感のある照明配置ができないから、登場人物の顔が薄暗く埋没したのっぺりした画面なんだろうな」

映画の画面を観ている間、物語に没頭するのを妨げるノイズが終始画面に写り込んでいる。

物語の終わりと始まりで主人公が違って見えないというのが、この映画の失敗を雄弁に物語っている。主人公の響子は何を得て、何を失って、どのように生きると決断したか。表面上では理解できるが、まったく真に迫ってこない。
主人公の変化を衣装、照明、音楽、演技と様々な要素をまとめあげながら、さり気なく豊かに語る映画(同時期に作られた『ブルックリン』なんか良い例だろう)を観ているので、この映画のようにただただ冗長で安い作りのものではまったく満足ができない。
TakashiIbayashi

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