辛気臭い色恋物だと誤解していたけど「誇り」の話だった。
芸のために人の心を弄ぶなんて許せんと思っていた藤十郎なのに、不入りに憔悴して幻を見る姿に、泣いた。
長谷川一夫の品格に押し切られた。
「大経師昔暦」の本読みを終えた役者たちがお通夜のように静まり返って、近松に「えらいもん書いてくれたな」と言うた所は息を飲んだ。
「今までのようにうわべの形だけ舐めていてはしくじるに決まっているのや」
「絵空事では真実の心を納得してもらえぬ」
結末はともかく、過程に心打たれた。
マチ子様は、浮世絵のように品があって美しかった。完璧。
人気役者 藤十郎の強火ファンの女の子たちが、夫もそっちのけで追っかけしたり「藤さま!髪の毛ちょうだい!!」と叫んだりするのが、推しへの想いは昔も今も一緒だなぁと思って面白かった。
(京マチ子映画祭)