Benito

死の谷間のBenitoのレビュー・感想・評価

死の谷間(2015年製作の映画)
3.9
【 ディストピア?ユートピア? 】

この映画の監督と撮影監督は、タルコフスキーの「惑星ソラリス」「鏡」「ストーカー」のイメージ、つまり60-70年代のロシアの風景を意識して製作していたという。撮影の大半はニュージーランドではあったけど、ディストピアを感じさせるアプローチができていたと思う。

聖書を題材にしたバート・C・オブライエンの小説「死の影の谷間」の映画化は一見地味な物語だけど「スーサイド・スクワッド」でブレイク直前のマーゴット・ロビーがすっぴんで主演した作品。そしてクリス・パイン、キウェテル・イジョフォーのスターが共演。

ストーリーは核汚染で世界中が死に絶え、ある小さな村で犬と共に暮らす孤独なアン(マーゴット)がある日、滝で水浴びをしている男(キウェテル・イジョフォー)を見つける。ふたりが共に暮らしているうちにもうひとりの男(クリス・パイン)が現れる。完全な三角関係じゃん、、

3人が暮らす静かな谷間は元々2人だったらユートピアだったのに、3人だとディストピアつまり死の谷間になってしまうのでは、、と観るものがやきもきしてしまう。さて、どうなる! そこがこの映画のポイントかと思う。

そして、終盤にテーブルにあるガラスのコップをマーゴット演じるアンが落とすシーンが意味すること。暗示、であり更にはアンの思考の変化なのかと。。このシークエンスもタルコフスキー「ストーカー」引用だったりするからこだわりを感じる。映画自体は注目度少ないし、将来シネマテークで観れるような映画ではないかもしれないけど、なんだか観たあと余韻のある作品。

<サウンドトラック> 全26曲 
Amazon Music Unlimited配信
スコアはヘザー・マッキントッシュで
「コンプライアンス服従の心理」(2012)
など担当。今回の劇伴は静かなサスペンスなスタイルと癒し的なストリングスなど落ち着いたタッチの構成。
Benito

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