チィ

プラネタリウムのチィのレビュー・感想・評価

プラネタリウム(2016年製作の映画)
4.3
おい、なんだこの低い総合レビュー点数つまんなそうだからやめとこう…って思うでしょ?でも結局は相性なんだよ!と心から思ったプラネタリウム。良かった。体感時間はめちゃめちゃ長いけど、興味深い作品が現れたなって嬉しくなった。

空気感はあくまで戦前を意識して、レトロにフイルムは手回し。ネガを加工して行う特殊効果、木製の機材装置。「カメラという存在は昔の人にとっては幻想にすぎないんだ!だから僕らは死者なんだ!」という主張。なるほど!なるほどすぎる!現代に生きる私たちは、現在の4DXやIMAX技術を最先端だと思って、ノーランまたカメラ壊したのかよ〜とかやいやいやっているわけだけど、私たちは現在と過去を描くことしかできないわけで。いまみているSFや未来の世界は、現代の幻想であり、未来の人々にとっては過去である。未来の人々にとって私たちは死者となる。全くその通りで面白い。…というのはサラッとしか言わないんだけど、いま帰り道に沸々と湧き上がる様々な感情に私たちは左右される。

ストーリーは霊能力に魅せられた人々だけど(おいそこでマジックインムーンライトを思い出すんじゃないぞ!)そこから映画の世界に繋げる感受性がまた私はとても好きで。初めて演技をする葛藤とリリー=ローズがまだ出演作2作目という事実に気づくと、この作品が描きたいことは実際現実の撮影の中にも忍んでいるのではないかというスパイラルにハマる。でも所詮は私たちの『希望』で映画は成り立つのであり、演者は役の感情全てを理解できずとも、監督は表現したいものの事細かさを完全に理解しなくても良いんだなと気付かされる。

映画と撮影にしか触れてないけど、素直にナタリー・ポートマンの存在感と女性としての葛藤、嫉妬が繊細にしなやかに描写されている。手に取るかのように、感情が雪崩れ込んでくる。素晴らしい女優さんだなと再確認できる、凛々しさと惹きつけられる目力。

本当に語り出すと止まらなくなる作品、だけど長いつまらないという感情と隣り合わせなのかもしれない。映画館で自分との相性を試す、そんな芸術の秋も良いのでは?(公開2ヶ月も先って知らなかった…)
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