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神様の思し召しのRのネタバレレビュー・内容・結末

神様の思し召し(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

イタリア映画。
ユーモアに溢れていて何より間がおもしろい。

頑固で傲慢な父であり外科医であるトンマーゾが、息子が神父になるのを止めるべく奮闘する過程で、心を改めていくストーリー。
身近にいる愛する人を大切にする尊さを教えてくれる。
そして外科医で金持ちという設定のためお家の小物もセンス良い。

いつも部下に当たっていれば、声をかけるだけで相手は反射的に萎縮してしまう。
「髪型変えた?」部下の笑顔。
自分の態度や言葉一つで、相手を怖がらせることも喜ばせることもできる。

相手を下に見る。見られている者は敏感に感じる。
気づかず芽生えていたマウントにより、その人の言動など耳も貸さなかった。
娘との会話(喧嘩)に出てきた歌手の名前が、たまたまラジオから流れてボリュームを上げるシーン。
娘の好きな曲を聞く。
その人のことを知りたい気持ちの現れ。
この際自分が好きになれるかどうかはどうでもよく、寄り添っていく、ということ。


何年も前にきた場所さ
朝刑務所を出て…一度ならずいろいろあってね
そのうち話すよ もう友達だろ?

当初、息子を神父の道へ導いたとして怪しみ敵視していたピエトロからのこの言葉。
足繁く通う聴衆に話せないことも、友達だから言える。
自分の好きな景色を共有する。
関係性の変化で会話もその人との思い出も変わる。


ピエトロによれば、涼しさが顔を撫でるのも、ある日果実がぽとんと落ちるのも神だという。
それから単なる自然現象だった風景の見方が変わる。
ピエトロが危篤になったとき、「やることがある」と真っ先に彼の思いを継ぎ教会をきれいにした後、教えてくれた景色の場所へ。
そこで風が靡く。実が落ちる。
ふっと笑みを浮かべるトンマーゾ。
たとえ神を信じていなくても、相手の言葉やその言葉を聞いたシーンが目に浮かぶ、それは心に友がいる証拠。


心が変わったんだ
悪くないさ 私もよくある
絶対的確信の人間だと思ってた
私もそう思ってたがね

人との関わりによって、自分の知らない一面に気づくことがある。これも生きる素晴らしさ。


味見を 君の好物だったから作った

相手の好きなものを捧げるのも愛♡


君はきれいだ
ゾッとするからよして

恋人だったときは当たり前にかけて受け入れられた言葉も、年月の重みが歯痒くさせる。


性格を変えることは難しいかもしれない。
余裕がないと自分のことしか考えられない。
けど一緒に生きる人たちの人生は止まってくれない。

変化がないものはない。
いつも隣にいる人だって、当たり前にあぐらをかいて対話をやめれば、変化に気づくことができない。
急にその人が変わることはほとんどなくて、大抵は日々の変化を見過ごしていたことによるもの。
この映画は妻と娘や息子と和解できたけれど、現実にはできないケースもある。
家族がいれば家族。仕事していれば同僚や上司、部下。一人で生きていくことはできない。
トンマーゾがお店で居合わせた客の症状を突然見たシーンがあるように、自分の才能を分け与える、分かち合う。そこにも生きる意味がある。
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