さやか

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐのさやかのレビュー・感想・評価

5.0
なんてきれいな作品だろう、
ひたすらそう感じながら鑑賞していました。今回は、これから繰り返し鑑賞したいほど素晴らしい作品に出会うことができました。

おしゃべりな天才作家トムと寡黙な敏腕編集者パーキンズの両極端な二人が出会い、時には衝突をしたり、また時には笑い合いながら、全身全霊で共に作品を創り上げていきます。作家が大切に紡いだ文字、文章を筋が通るように不必要な箇所を削り、シンプルに、伝わりやすいように直していく編集者。どちらかが欠けては成立しないこの特別な関係は、まるで自分たちの思うがままに演奏家がそれぞれ音楽を奏で、それを指揮者が音楽として成り立つように微調整を加えながらせっせと修正していっているようでした。

一番好きだったシーンは、自分が大切に紡いだ文章を、意味が通るように削る指示をするパーキンズにトムが納得できずに憤り、たまには息抜きも必要だし、自分の背景を知ってからこういう指示は是非してほしい、と行きつけのにぎやかなジャズバーへパーキンズを案内し、二人でおいしいお酒を片手に音楽を楽しむところです。静かなクラシック音楽でも、曲調を変えれば一気にジャズ調になる。音楽の奥深さと、文章の執筆に通ずる面白さが作詞にもあるとのメッセージが込められていました。作詞家はいわば音楽における作家とも言えるのかもしれません。

トムと知り合ってから、普段のポーカーフェイスが崩れて表情が徐々に柔らかくなり、人間味が増していくパーキンズから終始目が離せませんでしたし、NY中のどの出版社に持ち込んでも出版を断られ続け、自分の作品をどんなに貶されようとも、自分の才能を信じて疑わなかったトムの熱意にただただ圧倒されました。自分を信じる強さがトムとパーキンズを出会わせたのかもしれません。

他にももっとここに書きたいことはありますが…そろそろネタバレになってしまいそうなので、他の部分については是非皆さんが作品をご覧になってお確かめください:)

余談ですが、この映画を観た帰りに、思わずこの作品に登場した天才作家トムの"Look, Homeward, Angel"を買って帰るぐらいに、ものすごく心動かされた作品でした。これからこの本もじっくり読み込み、この作品とその背景についてより深く知っていきたいと思います。
さやか

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