糸くず

マキシマム・ブラッドの糸くずのレビュー・感想・評価

マキシマム・ブラッド(2014年製作の映画)
3.6
ソフトのジャケットに「その男、最強の人質奪還屋。」と目立つように書いているが、人質奪還はしない。冒頭、ハニートラップに引っ掛かったヴァン・ダムがホテルの部屋で腎臓を取られたことに気づいて「最悪……」といった感じになるが、臓器売買の闇に迫るわけではない。

では、一体どんな話なのかというと、実は兄弟の愛と確執の物語であり、愛する者のために人はどこまでできるのかを問う、低予算アクション映画らしからぬ骨太な話なのである。

職業:人質奪還屋のディーン(ヴァン・ダム)には、大学教授の弟ジョージがいる。職業だけでもわかるとおり、この二人は性格も境遇も正反対である。疎遠だったディーンがマニラでジョージと再会したのは、難病を患う娘に腎臓を提供するためである。

「このままでは姪の命が助からない!」とぶちギレたディーンさん、弟を連れてマニラの裏社会で大暴れ。ホテルに置いてある聖書を文字通りの武器にして(破れた表紙の角で目潰し!)、クラブにいたチンピラをボコボコに。この乱闘の際に、ディーンの友人の部下で、ボディガードとして兄弟に付き添っていた青年(台詞なし)があっさり死亡。ジョージさんは呆然とするばかり。

しかし、ディーンは黒幕の追跡をやめない。実は、ジョージの娘には、ある秘密がある。「秘密」と言ってほのめかした時点で勘のいい人はわかってしまうかもしれないが、この秘密のために兄弟の仲がぎくしゃくしている。で、この秘密が、百戦錬磨のプロであるディーンが簡単なハニートラップにあっさり引っ掛かってしまったことに関係してくる。この兄弟の微妙な関係が事件によって露になっていく展開がよく練られていてなかなかうまい。

ジョージはディーンのことを「許している」と言う。しかし、ディーンは詰め寄る。俺のことを本当に許しているのか。娘のことを愛しているのか。この二人の対決の場面は辛い。緊迫感があってよいのだが、いくら何でもそこまで言わなくていいのではないかとも思う。

最後は黒幕の居場所へ殴り込み。ディーンはもちろん、ジョージも銃を手にして闘う。娘のためだ、何だってやってやる。ここでも意外な展開が待っていて飽きさせない。

これで監督の力量がもっと高かったら大満足なのだけども、それは欲張りすぎなのだろう。ヴァン・ダムお得意の大開脚と全裸のサービスショットもあるが、むしろヴァン・ダムファン以外にオススメしたい。
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