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ドント・ブリーズのKuutaのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
3.7
グロさ控えめ、低予算でタイトにまとまった良作。

最初はスパイ映画のような潜入もの。家の構造を存分に見せつけるあのワンショット、いろんな伏線が詰まっていて素晴らしい。

爺ちゃん(スティーヴン・ラング)に見つかってからは隠れんぼ&鬼ごっこ、殺し合い騙し合いに移行。爺ちゃんは打たれ強いが、聴覚はそこまで抜群って訳でもなく、グダグダと若者との泥試合が続く。カメラがパンすると暗闇で立っている、というホラー演出は何度見ても怖い。

廊下をギリギリですれ違う所とか、ブレーカー落として立場逆転(アップテンポなBGMと天井や棚を触ってノリノリで追い詰めてくる爺ちゃんが怖いけど楽しい。羊たちの沈黙風だった)とか、明るくなってから冷静に犬を閉じ込め、武器を調達するアレックス(ディラン・ミネット)の頼もしさとか。ずっと役立たずだったバールが最後に活躍して満足。靴を脱いだ結果人数がバレるが、そもそも何故脱ぐ必要があったのかよくわからなかった。

「ホームアローンLv.100」と呼ぶ声も聞いていて期待していた分、ランボーみたいな鬼畜トラップが無かったのは残念。

すごい怖い盲目の爺さんがすごい怖い盲導犬を連れているという設定は最高。犬が廊下で待っている場面は「来たー!」感があってテンション上がったが、全体に犬絡みはあんまり面白くなかった。特にロッキー(ジェーン・レヴィ)との車での対決は同じパターンの繰り返しで退屈(犬をなんだかんだで傷付けないのは好感)。

手錠を掛けられ「もう出てけ!」と拗ねたり、洗濯機の音にあわあわしたりする爺ちゃんがかわいい。終盤は爺さんを応援していた。

娘を失い神を信じなくなった爺ちゃんが神に挑戦するような行為に出る。アレックスは善の側、ロッキーは善悪の中間。ロッキーの善の行動が報われるなど、もっと善悪の葛藤が表に出てくると良かったが…。

強盗と爺ちゃん、どっちにも感情移入しにくい作りなのでオチが読みにくいのも上手いなーと思った。爺ちゃんがアラームの混乱の中で思い出の詰まった写真を自ら壊してしまうのは良い演出だった。盲目だからか、娘の写真が上下ひっくり返っていたのも気持ち悪くて良い。

余談だが映画が始まる前の「ゴーストハウスピクチャーズ」(サムライミの会社)の社名が出る時の音が無駄にデカくてびっくりした。「サムライミの野郎…!」と思った。骸骨が鍵穴からニョッと顔を出しているロゴはけっこう可愛いけど。73点。
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