勝沼悠

永い言い訳の勝沼悠のレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.2
 突然の事故で妻を亡くした小説家は同じく妻を亡くした妻の友人家族と知り合う。

 軽薄なモックンに相対するのが竹原ピストルというのは良い。
 子どもがいる家族と交流したから人間性を取り戻したなんて話だったらつまらなかっただろう。「贖罪ですよね」なんて若い編集者の言葉でこの映画はそれをすぐさまそれを否定する。主人公が妻を失った作家というドキュメンタリーに出演を決めたことがメタだが、この話は常に虚構と欺瞞が出てくる。忘れることも忘れないことも違う。確かに、喪失を受け入れるということは綺麗に一度しっかり悲しんで前を向くなんてことではなく、ある種の虚構と欺瞞を抱えて歩いていくことなのかもしれない。東浩紀の『訂正する力』が頭に浮かんだ。
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