あでぃくしょんBBA

極秘捜査のあでぃくしょんBBAのレビュー・感想・評価

極秘捜査(2015年製作の映画)
4.2
2023.12.22 配信で視聴

一風変わったサスペンスもの。
事件解決のきっかけは、科学捜査どころか通常捜査ですらない。1970年代の終わりごろに韓国であった実話を基にしているらしいが、この顛末を信じるか信じないかは観る人次第。

神秘や占いの類を否定する立場では、占い師が裏稼業の事情に精通しててその情報を元に「占いではこうなった」と言ってるだけ、と解釈できる。あるいは犯人と共犯か。
しかし中心になった役者2人、キム・ユンソクとユ・ヘジンが巧いから説得力が凄くて、「そういうこともありうるだろうな」と思ってしまう。

「占いの類を信じるか否か」「事実はどうだったのか」をひとまず棚上げすれば、この作品、わたしには面白かった。
民主化以前の高度成長期真っただ中の韓国社会の貧富の差、当時の警察内における贈収賄と忖度と、被疑者への暴力の蔓延――そういったことがうかがい知れたのはもちろん、韓国の人たちの精神生活における占いの比重にかねてより興味があったからだ。
ひと頃より少なくなったとはいえ、韓国ではまだ呪術師(ムーダン)がたくさん現役で残っている。そして韓国の占いの正統と言えば「四柱八字」。本作に出てくる占い師も四柱八字の複雑な相互関係を読み取って(本人の弁を借りれば「天から降りてきて」)、刑事に意味とイメージを伝え、事件解決に結びつける。

一方で、「作品中であのシーンとこの言葉を出しながら、どうして最終的にスルーしたの?」と疑問に思えるところが1ヶ所。
セミの幼虫の大量死と、重化学工場の排水がそれである。どう考えてもこの二つには因果関係があり、しかも誘拐事件にはなんら関係がない。あれはいったい、何の意図で、編集段階でも切らずに残しておいたのか。
監督は、あの刑事と占い師が河川を汚染する企業を内偵・告発する続編をつくるつもりだったのだろうか??
毒の因果は陰陽説と五行説の合わせ技でも説明できるから、易学者ユ・ヘジンを主人公にした映画、つくられたならちょっと観たい気がする。
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