秋日和

三日間の秋日和のレビュー・感想・評価

三日間(1992年製作の映画)
4.5
カテリーナ・ゴルベワほど揺蕩うという言葉が似合い、そして繊細な女優は滅多にいないと思われるのだけれど、そんな彼女の存在は、この映画において何処か不安定でおぼつかない。もしかしたら消えていなくなってしまうのではないか、常に画面を観てハラハラさせられる。フィックス+長回しで部屋の様子をただただ映すシーンがあるけれど、煙草を吸いながらウロウロと部屋を歩き回る彼女は度々フレーム外へと姿を消し、そして戻り、また再び去っていく。フレーム外からオフの声として彼女の台詞めいたものが聞こえたときの安心感と言ったらない。彼女はまだそこにいてくれるのかと何度思ったことだろうか。この映画に於いて水たまりは鏡であり、それは彼女の存在を確かに映し出す装置として機能する。煙や雪、炎といった「消えて無くなってしまうもの」の連鎖が作品を豊かにする一方、それらは全て彼女が消失してしまうかもしれない不安に変換されてしまう。言葉を殆ど発すことなく、映画の持つ静寂さとは無縁の賑やかな部屋の窓(=フレーム)を彼女のいる悲しいくらい音のない部屋の窓(=フレーム)から見つめる彼女の眼差しが、ただただ切なく、そして美しかった。タルコフスキー『ノスタルジア』(1983)にかなり似たショットもある(ソ連繋がりかな?)。シャルナス・バルタスの生み出す静謐さとカテリーナ・ゴルベワの所在なさが驚くほど溶け合っている、硝子細工のような映画。
秋日和

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