ジョンマルコビッチ総統

巷説百物語 狐者異のジョンマルコビッチ総統のレビュー・感想・評価

巷説百物語 狐者異(2005年製作の映画)
2.7
今回の実写映像化は2度目。
実は以前「京極夏彦 怪」と銘打ち、「赤面ゑびす」「7人みさき」「隠神たぬき」「福神ながし」という4作品が、又市を田辺誠一、おぎんを遠山景織子、百介を佐野史郎に据え実写化されている。
そちらも原作から必殺風に相当脚色(しかも脚本は京極夏彦)されていたものの、そのデザインが脳裏に刷り込まれていたもので、今回のキャストには若干の違和感を感じてしまった。
又市、百介に関して刷り込みだろうが、おぎんの小池栄子は勝気な美しさという点ではまさにおぎんに相応しいが、連作の原作の中でもおぎんが幼い時分のエピソードなので小娘感が薄く違和感があった。逆に時代が降ったエピソードでは艶っぽい年増感(20代後半の大人の女感)がキャラにぴったりだと思う。
治平に関しては、堤流の改変をされまくっていて、原作にはそんな描写がないのに映画では陰間通いの小汚い小便じじいにされていた。大杉漣の演技がまた上手いので、まあ画面のこちらまで臭い立ちそうで。食事時には厳しい。そして治平の腎臓が心配になる笑
作風は堤節全開で、「ケイゾク」や「trick」をそのまま時代劇にしましたという感じ。怪しくコミカルでスタイリッシュ。また役者のクセを生かしたキャラメイクは本作でもなされており、堤作品お馴染みのクセの強い俳優も多く出ている。
原作のこのエピソード自体がそうなので仕方なくはあるのだが、原作の特徴である妖怪を使ったカラクリをもう少し前面に出しても良かったかな(タイトルを冠するくらいだし)と、そこはもう少し脚色を加えて演出しても良かったのでないかと思ってしまった。「火縁魔」に期待。
本映像化で良かったのが音楽で、三味線の旋律をそのままギターで演奏したり、奄美の島唄のような民謡を取り入れてみたりと斬新な試みがあって、創意に富んでいてとても良かった。ビデオ屋にあるB級Vシネマ時代劇の怪と比べると垢抜けた明るいエンタメになっている。

原作ファンなので、Vシネマの怪やアニメまで一通り観たが、個人的には、湿気っぽく情念渦巻く往年の時代劇である怪の方が好みだったかな。