あき

13時間 ベンガジの秘密の兵士のあきのレビュー・感想・評価

3.5
創作物だとまず死なない設定の者が死んでしまったり、”そのフリこの人死ぬ前フリだな”と思った人が死ななかったりする忖度のない実話ベースのこの物語は、その意外性と先が読めないのがやはりリアルで、フィクションは現実を越えられないと改めて痛感する。
そして2時間半にわたる長尺なのに時間を忘れるほど緊張感が途切れることがなかった。
それにしても、
9.11によって対立軸が明確になった中東vs米は、重火器や無人機他爆撃機等が主体となるいわゆる”戦争”では圧倒的優位に立つアメリカでも、戦地を敵国に位置した武装集団との肉弾戦による”地上戦”が主体では人数的に圧倒的不利を強いられ、劇中にある悲劇は到底避けられないが、戦死してる数的には圧倒的に敵国側にあり、理由がどうであれ殺された側は相手に恨みしか残らず、シリア側の戦死した者の母親や子どもの泣き悲しむシーンは、改めて戦争には本当の解決など導き出すことなどできないのだと確信する。
そして、「グリーン・ゾーン(2010,米)」でも、”自分たちの国の未来は自分たちが決めるんだ”と印象的なセリフがあったけど、まさに同じセリフがこの映画でも発せられる。
これはつまり、大国のイデオロギーや正義が決して唯一の選択肢ではなく、その国の国民の自主性主体性を無視した押し付けは決してその土地に根付かないことは、米国が撤退した途端政権が転覆したアフガンの事例が明確に示したことは記憶に新しい。
そしてあれだけ対立が明確であったところの主役であった中東がいまやすっかり影を潜め、いつの間にか今ではすっかり中国との対立ばかりが焦点となっているが、決して中東との対立が消えたわけではなく、
改めて9.11の頃より世界は局地的からより一層世界的な戦争の時代に入りつつあることを感じて戦慄する。
あき

あき