ヒチ

ビデオ・レター 寺山修司&谷川俊太郎のヒチのレビュー・感想・評価

3.8
これは凄い...。強靱な2つの精神の対峙。明確な言葉と映像で対話を試みる寺山修司と、それを挑発するように曖昧な言葉と映像ではぐらかす谷川俊太郎。寺山よりも詩人である谷川の方が言葉を信頼していないように感じられるのが面白い。 むしろ詩人だからこそ?

寺山の質問を「言い淀む」ことで返答する谷川に対して、マトリョーシカのような箱を開け続ける映像と「谷川さん、たくさんの言葉をありがとう。でも言葉は文字でも音声でもなく意味だと思うんです。」と切り替えすところの凄み。そして、自らの死を意識して意味にこだわり続ける寺山の心情を察して、谷川がそれまでの態度を一変させて「命って、意味以上のものじゃないかな」と穏やかに問いかける優しさに泣く。

最後は切ないけれど、このようなやり取りがあったことこそ救いだと思いたい。

「言葉が眠るとき、どんな世界が目覚めるのかな?」
ヒチ

ヒチ