くるぶし

ヒトラーの忘れもののくるぶしのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
3.9
終戦後のデンマークで地雷処理を命じられたナチスドイツの少年兵捕虜とデンマーク軍軍曹のお話。

戦争が終わっても傷跡は残る。物理的に地雷として残されるものもあれば、人々の心に残るナチスドイツに対する恨みも。

駆り出された少年兵は組織としてはナチスドイツであるが、1人の人間だ。
時間と対話を重ねて人を知ることで憎い奴らも人の子であることがわかってしまう。
ここに関してはオウムの内部を映したドキュメンタリー映画「A」とも似たテーマを感じた。
敬愛するライムスターの歌詞を引用するなら「こちらから見りゃサイテーな人 だがあんなんでも誰かの大切な人」(POP LIFE 2011)

肌の色や国籍、出自や学歴などこの世にはわかりやすいレッテルというものが数多くある。それで分けてしまえば簡単だから頼ってしまうことも少なくない。
複雑なものを複雑なまま理解する。それが今の時代に求められる能力かもしれない。そのために一つずつ知る。知るために感情的にならずよく観察し、観察するために自分から一歩近づく。

声が大きければ、わかりやすければ意見が広まってしまう時代に声なき声を聴くきっかけをくれるような作品。道徳の授業嫌いだったけどやっと意味がわかった気がしました。

あとPOP LIFEの宇多丸師匠のバースが非常に素晴らしいと改めて感じた。いつの時代だって変わらない唯一の解決法をわかりやすく砕けた表現で伝えていたんだと今更気づき感服しました。ぜひ聴いてみてください。
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