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アンドレイ・アルセニエヴィッチの一日のpikaのレビュー・感想・評価

4.0
泣けた。
タルコフスキーの遺作「サクリファイス」制作中、癌で闘病するタルコフスキーを捉えたドキュメント。
タルコフスキーがこの世に遺した7作を紐解きながら彼の芸術性や想い、人生を映し出していく。

映画ひとつひとつ、シーンひとつひとつの意図が謎かけになり、観客に対して自由な解釈を与える「映画という芸術」を生み出した稀有な芸術家。
どこかで読んだ記事に「タルコフスキー作品は映画をあまり見ていない人や詳しくない人に見せるといい。興味があるとかないとか関係なくランダムに、例えば中学校の授業なんかで流すと、彼の芸術性に呼応する生徒が少なからずいる」というようなことが書かれていて、タルコフスキーの作品は映画に詳しければ好きならば楽しめる作品ではなく、映画という枠組みを超えて一つの芸術としてタルコフスキーの映画の中に自分とリンクする何かが「鏡」のように反射するものなのだと思えた。

一切の妥協をせず、自身の描いたイメージを完璧に形にすることは全ての芸術に於いて映画が一番難しいことだと思う。
一人で創作できないし、一人で資金繰りできるレベルではない大掛かりな芸術という意味で、万人がすぐにでも受け入れ資金を回収しなければならない商売面が強い表現方法である。

タルコフスキーは幼少期画家を夢見たが病弱で挫折し、音楽家を夢見ては貧乏で挫折し、最後の最後にソ連の映画学校に入学できたことで自身の芸術性を映画に賭ける人生を歩むことになる。
何かを表現できなければ意味がないと徹底した芸術性をソ連という国が受け入れず、映画を作る度に打ちのめされてきても諦めずに、犠牲を賭してまでも作り続けてくれたタルコフスキー監督。

ドラえもんがいたなら道具持って過去行って歴史替えさせて欲しいです。
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