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悲しき天使のdm10foreverのレビュー・感想・評価

悲しき天使(1991年製作の映画)
3.7
【アキ・カウリスマキ・ワークス③】

シネフィルWOWOWプラスお試し無料期間にて「アキ・カウリスマキ短編8作品」を鑑賞。
これはその3作品目です。

(あらすじ)
レニングラード・カウボーイズのプロモーションビデオ。
メリー・ホプキンの歌唱で知られるロシア民謡のカバー「Those Were the Days」に乗せて、ロバを連れた男の奇妙な一夜が描かれる。

これも前作同様レニングラード・カウボーイズのMVという体の作品ですが、ここら辺からは徐々に「カウリスマキ色」がわかりやすい感じで出てきますね。

レニングラード・カウボーイズって、もともとからあるバンドだと思っていたんだけど、実はカウリスマキの作品(レニングラード・カウボーイズ ゴー・アメリカ)から生まれた創作のバンドがそのまま映画の後もその名前で活動するようになったっていう、いわば「カウリスマキ・チルドレン」なのね(笑)
もっとも、最初は「スリーピー・スリーパーズ」っていうバンドだったらしいんだけど、結果的には「こっちに乗り換えて正解」って感じだろうか。

ってな感じで、相性どころか「息ピッタリ」な感じのカウリスマキ×レニングラード・カウボーイズ。
彼らの持つ「普通にいるだけでジワる雰囲気」と、カウリスマキが映し出す「バラバラなようで一つの構図に収まる不思議な世界感」っていうのがマッチしているんだろうね。
だからカウリスマキも彼らを撮り続けたのかもしれない(あるいは親心か?)。

男も女も見た目は全員ロングリーゼントなんだけど、やっていることは「哀愁漂う場末の酒場での人間模様」っていう大人のドラマだし、歌っている曲も何ともメランコリックな感じでとても良い曲。
メリー・ホプキン版も聞いてみたけど、何とも哀愁のあるしっとりとした曲で、これをレニングラード・カウボーイズが歌うとこうなるんだな~っていう面白さも感じる。

この辺の、作中に漂う絶妙なアンバランス感がジワジワと込み上げてきて、6分そこそこの作品ではあるけど、キチンと印象に残るあたりは「さすがカウリスマキ」って感じなのかも。
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