あき

バーニング・オーシャンのあきのレビュー・感想・評価

バーニング・オーシャン(2016年製作の映画)
4.0
この事故の原因として安全より工期とコストを優先した会社に責任があるのは論じるまでもないとして、
米国きっての大会社がそういう判断になったのは、事故の時点ですでに工期を2ヶ月近く遅らせてしまっている中で、結局ユーザーのニーズの圧力になんとか応えようとする会社側の焦りも視点を変えれば理解できなくはない。
自分だって、会社側の立場にいて顧客にガンガン詰められてる中で”安全第一だからお客様のご要望には応えられません”って突っぱねられるかって話。
企業は経営者側と労働者側の価値観が常に一致するわけではなく、双方の緊張感の上に立ってなんとか成り立っている中でその微妙なバランスが崩れたときに悲劇が訪れる。
実際事故が起きてしまったから”クソ経営者!”って人は直情的に感情的に非難するけど、どんな経営者だって事故が起きるのわかってたら安全を優先する。
だって、事故が起きたらその補償で結局ちまちましたコスト削減なんかとは比にならない金額が”流出”するんだから、利益優先しか頭にない経営者なら、より一層神経質になんとしても事故を止めるわけだし、ある意味予測できなかった事故だったんだろうなと思う。
でも、あのような事故で犠牲者を出したのはどんな理由があろうが会社の責任。
実話ベースだけに、エンドロールの実際の映像観ても作品中の事故の描き方が大袈裟な脚色でなく、リアルにあれだけの惨事が起きたというのは衝撃だし、でもその中であの程度の人的被害で済んだで済む話ではなくて、ひとりでも命を落とすことはあってはならないのは、エンドロールの亡くなった方々の写真を目の当たりにしたら誰しもが誰かのかけがえのない人だったことを思えばわかるだろう。
実際は火災爆発事故のあとの原油流出に伴う被害のほうが甚大だったけど、そこまでは描き切れないのは仕方ない。
この実話ベースの映画を観た人が事件に関心を持っていろいろ考えるきっかけになり、そういうひとつひとつの積み重ねが必要なのだろう。
ちなみに企業絡みの実話ベースの映画で従業員の奮闘を描いた類似作品としてデンゼル・ワシントンの「アンストッパブル」(2010)なんかも緊迫感あって見応えがある。
あき

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