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ぐしょ濡れ美容師 すけべな下半身のgogotakechangのレビュー・感想・評価

4.0
開巻早々から主人公たちは、事あるごとに"して"ばっかりいる。そりゃ成人映画、それも天下の新東宝作品なんだから当たり前ではある。

しかし、たった65分程度の時間の中で、豊穣な感情表現にシッカリと必然性をもたらされた濡れ場は、作品の時間経過と共に少しずつ見る者の受け止め方を変化させて行き、キチンと物語の行く末に観客を誘ってくれる。そのとき、もはや映画のジャンル分けは全く無意味なものとなっている。

日本映画の裾野の広さをまざまざと見せつけられたような気がした。

その昔、リリー・フランキーは「日本人は幸か不幸か、黒澤明監督の作品を知ってしまっている。だからそう簡単に映画を楽しむことができない」と言うようなことを書いていた。

それでも日本人は映画を撮り続け、黒澤や小津、溝口などのビッグネームにある時は真っ向から立ち向かい、ある時は巧みに体をかわしながら、映像による表現を休むことなく続けてきた。

だから日本の映画人は、表現にバジェットは関係なく、想像と発想をカネで買うことはできないことを知っている。そしてそれを一番効率よく発揮できる場がいつの時代にも存在し、それが斜陽のどん底の時でもVシネマや成人映画といった土壌だったのだろうと思う。

今回の上映後に行われたトークショーの中で、撮影の長田勇市氏は「今は撮影も照明も、機材の発達でスゴく楽になった。ただ演出と芝居だけは今も昔も変わらない。」と語っていたのが印象的だった。この二つだけは"映画"が誕生してからも全く変わらない。
そしてそれこそが観る者に訴えかけることのできる力を備えているのだと言うことを、この作品を通じて実感した。
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