あなぐらむ

痴漢義父 息子の嫁と…/夜明けの牛のあなぐらむのレビュー・感想・評価

4.3
実に見事なピンク映画だ。名投手の配球の様だ。
極めて映画的な変化球が来たかと思えば、画の素晴らしさと空間設計の巧みさ、役者達への丁寧な采配という直球が要所で丁寧に決まる。
笑いからペーソスへとスライスしていく物語の巧みさ。
九州、熊本辺りを舞台にしたローカリズムが旅愁を誘い(ロケは山梨)、田園風景を、牛舎を、山間を捉える飯岡聖英撮影が映画の格を何段も上げている。
主演の中村方隆の牧村耕次には無い朴訥な味わい、ヒロイン麻木涼子の控えめな昭和の女ぶりが、綺麗に枠に収まっていく。
助演のなかみつせいじと佐々木ユメカがトラブルメイカーとして物語を作り、秘められた関係をあばきだしていく。
飯岡カメラは絡みも絶妙な切り取りで、ショットの反復と回収は後藤演出の技量だろう。
脚本題は「夜明けの牛」。ユメカさんの読み間違えも納得のテクニカル作だ。