垂直落下式サミング

痴漢電車 下着検札の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

痴漢電車 下着検札(1984年製作の映画)
3.8
満州から持ち帰ったという世界最大の黒真珠の指輪の在処を知る男が死亡する。その宝の秘密は夫が写したというマンタクに隠されていると聞いた後妻に調査を依頼された私立探偵が、そのマンタクと一致する女性を探すために満員電車で次々と女性のマンタクを写し取っていくエロティックサスペンスだ。
今だったら色々な方面から怒られる映画だろうが、オープニング曲からして底抜けに明るいため、私は真面目に取り合う気を失った。
そもそも「マンタク」だのという言葉の響きそれ事態が下品であるし、そんなアホ映画に、張本勲など個人名を配慮せずに作品のなかに出してしまうのも、個人情報だの肖像権だのにうるさくない時代の、他人の顔色をうかがっていない、映画の映画らしい良さであると思う。
しかも、竹中直人が演じる松木清張に至っては、物語の主要人物のひとりとして登場するにも関わらず、ひどいヌケサクとして扱われる酷さ。これっぽっちの敬意の欠片もない。何者にも媚びない。清い姿勢の作品だ。
犯人バレバレの推理サスペンスからの、助手の膣圧を鍛えることによって清張に一杯食わせようとする探偵の逆襲、そしてあるべき場所に戻っていく黒真珠という結末はくだらないが、それなりに誠実な着地ではある。
印象的なシーンが多く、痴漢をされている女性の膣の内側に指が入ってくるのを表現した下品な特撮や、真っ白い照明に照らされた背景に男女が交わる絵画的なシーンなど、どれも見世物に振り切っていて気持ちがいい。
これをみるに、マンを型取ったブツを作ってしまうと偉いひとに怒られるが、マンの内側ということにしておけばモザイク処理を回避できるらしい。映倫の隙を突いた唯一無二の作品なのかもしれない。