曇天

レディ・プレイヤー1の曇天のレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
4.0
まぁこんな題材どう転んでも興奮するわな。原作は未読。
ビジュアルイメージが強烈でかつSF小説とあって個人的に期待し過ぎていた感もあり、紐といてみればストーリーはよくあるヤングアダルトのそれ。ストレートな青春冒険小説。だけどひとたびスピルバーグが撮ったりアラン・シルベストリが劇伴書いたりしてしまうと色々こみ上げてきてしまう。前半のスピルバーグ映画にありがちな子供時代の孤独感。原作にはあったスピルバーグネタ要素を排除していてもこれによってばっちりスピルバーグの作品になるし、今同じことを続けている彼を尊敬する。
80年代ネタがあまりピンとこない自分が一番懐かしかったネタはシルベストリのスコアだった。バック・トゥ・ザ・フューチャーのテーマ曲以外にもBTTF本編内のアクションの節々で効果音的に使われていた短いフレーズが、この映画でも所々のアクションと同時に鳴るのでそこに一番驚いた。劇中の最後とある人物が殴られた時に鳴ったのはダンスパーティの外でジョージがビフに腕を曲げられたシーンで鳴った音だったかと。もう全部照らし合わせたい。

『テッド』『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』『ストレンジャー・シングス』『デッドプール』『ピクセル』等80年代サブカルネタを用いた映像作品のヒットが続いており(ピクセル以外は続編あり)、80年代作品のリブートは数えきれない。その中でも『テッド』は80年代からの親友のぬいぐるみと決別しようとする男の話だった。『テッド』がオマージュしている『E.T.』では子供の味方であるE.T.に別れを告げることで成長を描いたが、今日の『テッド』ではテッドと別れない形で大人になると宣言する点で異なる。と、この論は町山智浩の映画塾の受け売りだが、今作ではかのスピルバーグもゲームと子供の完全決裂は避けたようだった。VRやEスポーツの普及で「ゲームによってヒーローになることも不可能ではない」ことも想像しやすい。80年代に夢見た世界が今の時代には意外と存在していて、各ヒット作は今現在の肯定と言えるのかも。でもそれはサブカル文化においてだけで、現実世界では問題が絶えないという事実を原作は表現したかったんだと思う。欲を言えば文化が現実世界の問題解決の鍵となるような流れが欲しかった。まあシリアスになり過ぎてもしんみりするので、今回身寄りのない孤児になった主人公が新しい家族を築く物語と見ればこれだけで大いなる救いだから、これはこれで良しとするけども。

ビジュアル面で特筆すべき所はネタ以外にも多すぎる。トレーラーが林立する異様な光景がそれ以降あまりSF的意味をなしていないのが気になったり、未来なのになぜか現実でも皆80年代的な懐かしめの服を着ていたり。登場したキャラのうちゲーム発のキャラだけはマルチプレイが普及した00年代後半の新しめのタイトルが多かったのは面白い。一番笑わせてもらったのはシャイニングパート。あとMI、スタトレ、SWに続いてサイモン・ペグ羨まし過ぎな。
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