MasaichiYaguchi

マネーモンスターのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

マネーモンスター(2016年製作の映画)
3.8
犯罪自体が恰も演劇やドラマの一部であるかのような犯罪のことを「劇場型犯罪」と呼ぶが、財テクバラエティ番組で、突然スタジオに侵入した男によって司会者が人質に取られ、番組がジャックされるのを描く本作は正に“劇場型犯罪ショー”だ。
映画の冒頭で、番組司会者リー・ゲイツが財テクは今やネットが中心だというような話をするが、株式投資も取引もパソコンやスマホで誰でも簡単に出来る時代になった。
だから容易に儲けることが出来る反面、一瞬にして奈落の底に突き落とされることもある。
「口は禍の門」と言われるが、自信満々で伝えたことが裏目に出て犯人に逆恨みされ、窮地に陥った軽いノリと饒舌が人気の司会者リーをジョージ・クルーニーが、この司会者やスタッフ、そして番組を救おうと、冷静な判断でテキパキと指示を出すやり手番組ディレクター・パティをジュリア・ロバーツが演じているが、人気、実力共に兼ね備えたこの2大スターが作品をしっかり支え、花を添える。
そして番組をジャックする犯人カイル役のジャック・オコンネルが、今時のワーキング・プアな若者をリアルに演じている。
この作品から浮き彫りにされるのは、アメリカの格差社会。
1%の人々に富が集中し、残りの人々が働きアリよろしくあくせく働いている社会の実態、特に犯人のカイルはその最下層の一人だ。
そして本作ではもう一つ、社会の闇にある真実を白日の下に晒そうという報道者魂がドラマチックに描かれている。
オスカーを2度受賞した名女優・ジョディ・フォスターが監督した4作目のこのスリリングな映画は、彼女が監督としてもすぐれた才能の持ち主であることを感じさせてくれます。