合縁奇縁

マネーモンスターの合縁奇縁のネタバレレビュー・内容・結末

マネーモンスター(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2016年6月2日、試写会にて鑑賞。
ジョディ・フォスター監督による舞台挨拶での発言。
「この映画には、3つの世界があります。ひとつはウォール・ストリートに代表される金融の世界、そしてインフォテイメントと言われる、情報とエンタメが混ざった、今アメリカで流行っている番組作りの世界、そしてハイテクノロジーの世界。この3つが合わさると危険な世界になります。そこに生中継というクレイジーさも加わっています。我々の世界でリアルなものと、リアルでないものはなんなのか、それも描きたかったものです。」
ジョージ・クルーニーさんが人気キャスター<リー・ゲイツ>役として演じる番組名が「マネーモンスター」。上記の「インフォテイメント」番組なのですが、映画冒頭では金融・財テク情報をリーがオモシロおかしくテンポよく撒き散らしていく様子が描かれてます。推奨株の紹介においては、株価チャートの値上がりカーブを「官能的」と評したり、「銀行預金より安全」とコメントしたりと。ここにおいては情報は視聴率を稼ぐための材料にしかすぎないので、キャスターのアドリブで情報の中身から視聴者の感情を揺り動かすべく夢のように心地よいけど何か得体の知れないものになっていくんです。
これが怖いですね。そもそもリーマンショックで明らかになったようにCDSのような金融商品は不透明でインチキくさいもので、「みんなで渡れば怖くない」と「そのうち私じゃない誰かがババを引く」という思い込みだけで暴走する宿命を持っているのですから、インフォテイメント番組でそういうことすらまるで麻薬のように麻痺させられてしまうってことにぞっとします。
番組に煽られて推奨株に投資し全財産を失ったカイル(ジャック・オコンネル)がリーを盾に投資した株式が紙屑となった理由を糺すべく当事者である企業のCEOウォルト・キャンビーに迫ります。狙撃隊が囲む中これらがすべてライブ中継され、リアルな犯罪事件すらまさにテレビドラマのように消費されて、カイルの恋人が画面を通じて罵倒し続けるのも番組を盛り上げるための演出のようです。
そしてこのライブ番組の果てにはリアルに血が流れたりするのですが、そこには人の死の尊厳や死への悼みはなく、カイル以外の不可視の大量の死体の山を<情報>が軽々と踏み越えて行くのです。
そういう意味ではジュリア・ロバーツさん演じる番組のディレクター<パティ>の笑みにこそぞっとする怖さを感じましたね。
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