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マグニフィセント・セブンのvenom9のレビュー・感想・評価

マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)
3.7
シンプルな勧善懲悪もので楽しめました。
主役級のスターが多数参加していて、米国における西部劇の人気の高さが窺い知れますね。
本作舞台となる町ローズクリーク(現在のミネソタ州)の自衛と、暴虐の実業家バーソロミュー・ボーグへの復讐のため雇われた「偉大なる7人」は多民族混成チームでしてポリコレ迎合が過ぎるとの批判が見受けられる本作ですが、あながちありえないメンバー構成ともいえません。まずリーダーのサム・チザム(演:デンゼル・ワシントン)がアフリカ系の委任執行官(現在の逃亡者逮捕連行捜査官、通称バウンティ・ハンター)ですが、本作舞台と近い19世紀中頃のミシシッピ川以西で初のアフリカ系保安官、バス・リーブスが大活躍していますので、この設定はありえない話ではないです。
メンバーの一人、バスケスはメキシコ人ですが、19世紀前半、メキシコは現在のテキサス州やカリフォルニア州を含む広大な領土を有しており、そりゃ中西部にもメキシコ人いるでしょう。
ビリー・ロックス(演:イ・ビョンホン)については、「東洋系」の設定にボカしたのは賢明です。当時、奴隷制度以降の安価な労働力として中国人は米国に数万人いたようですが、朝鮮人の米国への移民は20世紀に入ってからだそうですから。
本作劇中はじめて登場したデンゼルの格好良いこと。黒尽くめの衣装に黒っぽい馬、うっとりします。ガンマニア/ハンターでもあるクリス・プラットは本作適任ですね。脅された相手から奪ったウインチェスターライフルからレバーアクションで抜弾するシーンが格好良いです。二丁拳銃で戦うシーンは、本作の2年前に公開されている「ガーディアンズ・オブ・(ザ)ギャラクシー(なぜ「ザ」を抜く?、邦題)」のピーター・クイル/スターロードのセルフオマージュっぽくてクスッとしました。
グッドナイト・ロビショー(演:イーサン・ホーク)とチザムとの再会抱擁もグッときました。「トレーニング・デイ」で二人は師弟関係でしたからね。
熊のようなジャック・ホーン、コマンチのレッド・ハーベストも良かったです。コマンチはネイティブアメリカン屈指の戦闘民族?で、騎馬戦をこよなく愛したとか。拉致したり、交易相手としたり、婚姻関係になったりと侵略者たるヨーロッパ系の人々との関係は複雑ですから、本作のような共闘もなくはないかな。
勧善懲悪ものとはいえ、ローズクリークの人々だけでなく「偉大なる7人」のうち過半数が戦死していて、溜飲下がりすっきりとはまいりません。暴力や争いは不幸な結果しか生まない、というメッセージが感じられます。
惜しむらくは、ヴィランのバーソロミュー・ボーグがあまり強そうでも冷酷でもなさそうなところですね。もっと強くて憎たらしい雰囲気だと、さらに盛り上がったように思います。
それにしてもウィンチェスターライフルの美しいことよ。
(2024年5月 U-NEXTで鑑賞)
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