イチロヲ

アルタード・ステーツ/未知への挑戦のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.5
脳に及ぼす幻覚作用を研究している学者が、自身を実験台にしてトリップ体験の深淵へと没入する。実在の人物・リリー博士の研究を題材にしている、サスペンス・ホラー。ちなみに「イルカの日」(マイク・ニコルズ監督)の主人公も同一モデル。

主人公は「どのような状況のときに、どのような幻覚を視るのか」ということを、日常的に研究している人物。たとえセックスの最中であっても、「脳みそは何を見ているのか?」ということに一点集中させる。このような、学者脳の描写がとても面白い。

観念的な映像の連発にめまいが起きそうになるが、「アッパー→ダウナー→ストーン」の流れに沿って、アシッド描写が目まぐるしく進展するため、興味が駆り立てられる。また、幻覚剤を求めてメキシコに渡る場面は、中島らもの著書を思い起こさせられる。

サイケデリックの深淵へと侵入した主人公は、そこで人類の進化の過程を視る。「宗教的見地を超越したところに真理を見いだす」というテーマ性を、笑っちゃうレベルのトンデモ展開で魅せてくれる。「すごい映画を観た!」という心持ちにさせられる珍品。
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