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バービーのkのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2023/08/11 字幕版
初日に鑑賞。アメリカのフェミニズムとガールズパワー炸裂。アジアとは抑圧の形もかなり違うけど、それも楽しめた! 基礎的な内容なので、私はぜひ男性に観て欲しい。マテル社でバービーが「偉い女性に会わせて!」と言う場面、「男性の上司を出して」のミラーリングかな。

バービーランドに子育て中のバービーはいなかったように思う(廃盤の妊婦のバービー?はいたけど)。人間界並みに子どもがいたら、果たしてバービーたちはあんなふうに仕事で自己実現できるだろうか? そういう社会を作れるだろうか? これでケン側が妊娠可能だったら、かなり完璧に逆転世界ができるよね。。と思いつつ、最後の結末を見て、(おそらく体外受精で)母親になったバービーがバービーランドにどんな新しい風を吹き込むか楽しみになった。

マテル社に勤めるお母さんが出世して終わるのかな?と思いきや、そういう展開はなかった。

音楽に関してはビリー贔屓すぎて、デュア・リパ大丈夫???って思っちゃった。

②2023/08/16 吹き替え版
吹き替え版で2回目の鑑賞。思ったのは、「女性のため(だけ)の映画」じゃ全然ないな、ということ。むしろ前半ってケンの話しかしていない。現実界を初めて目にした彼は、バービーランドに男性社会の価値観を嬉々として持ち込んでしまう。
前半はユーモラスに「有害な男らしさ」の弊害を描く。そこから一番変わったのはケンだろう(バービーランドのケン=現在の女性の立場)。

男性を馬鹿にしてる等の意見は、このメタファーを理解していない(そもそも反転元の女性差別にも関心が薄いのでは。ゆえに気づかない)。「現実世界の女性と同じようにね」的な結構わかりやすい台詞もあるのに。

(一定数の男性には受け入れ難さもあるかもしれないが)正直、ここはいたって分かりやすく描かれている。勘違いのしようもないほどに。バービーはバービーで、ケンはケンなのだ。性別やセクシュアリティに関係なく、互いを尊重して生きていこう!OK!という感じであまり難しく描かれていない。わりと単純明快。

逆に主人公バービーはさほど変わらない。バービーたちはもう十分に自己実現できている。みんなが職業を持ち、母親の役割からも解放され、永遠にガールズナイトを楽しんでいる。けれど、主人公は度々「私には何もない」と空虚な思いを抱える。端々に挿入されるビリーの曲の断片が精神世界へ彼女を誘う。それは死の予感と、死と表裏一体の「この瞬間を生きている」という実感だ。

後半は、二つの母と娘がメインになる。一つは、少女サーシャとその母グロリア、もう一つはバービーとバービーの生みの親の女性。生みの親から「素敵なことじゃない」「完璧じゃなくていい、あなたはあなたで十分なのよ」とありのままを受け入れられて、バービーは人間になる決意をする。人間になれば、複雑な悩みを抱えるし、死から逃れることもできない。それでも今までのバービーランド(人々の憧れ、作られた完璧、期待された役割を全うする人形の世界)では暮らしていけない。

そう決断したバービーがまるで就職面接に臨むように出かけていくのが「婦人科」だ(吹替では確か「診てもらいたい」と言っているから、明らかに患者側だろう)。「ツルペタ」「生殖器がない」普通の人間とは違う身体を持つバービー(これをトランス性と読む人もいた)が婦人科にかかるのは、非常に勇気がいること。1回目に字幕で見た時は、体外受精?バービーは男性を媒介せずに子を持とうとしている?と解釈してしまったけど、確かにこれだけだと分からないなと。。いずれにせよ人間として生きるため、自分の身体についてもっと深く知ろうと一歩を踏み出したのだろう。完璧じゃない人間の世界で、完璧じゃない私としてバービーが踏み出した一歩、応援したいな。

考えてみれば、うつ病や劣化に病んでいる「クレージー」なバービー像の元は、母グロリアが抱いていた妄想だ。つまり、この病や劣化は現代の私たちの心を表している。うつ病バービーだっていいじゃない、病んでセルライトまみれだっていいじゃない、と言い切れるほどには、私たちは解放されていないし、答えがなくて苦しんでいる。このバービーにも答えがない。
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