Tatsu

バービーのTatsuのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.9
思いの外地味で実験的な構成に面食らう。全てがアイロニーでできていて、華やかに見えて冷めた視点が常に作品を支配する。作品としてはまさにウィル・フェレルの2000年代コメディが最も似てるんだと思う。正直足らない所は多々あると思うが、リベラルな世界の虚構性をここまで辛辣に描写していることには驚いた。自己探索のテーマはガーウィグ映画お馴染みで作家の映画にちゃんとなっている。映画形式的な快楽は前2作に対して明らかにあえて抑えていて、最も即物的なカットとリアクションを収めること、編集に映画の流れを託していて、そこも2000年代のアメリカンコメディ的。そもそも快楽主義的なものから相反するような作品で、もっと華やかで楽観的な作品になることに抵抗し、思考の映画になっている。観客が求めているものをあえて与えない映画の作りをしている。だがせめて、終盤の会話シーンはもっと面白くあって欲しい。マンブルコア出身者として。自分は、アランやミッジなど、孤独なバービーランドの住人たちに光を当てた脚本を求めている。
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