ジェイコブ

バービーのジェイコブのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.1
そこは夢と想像力の楽園バービーランド。人種差別や貧富の格差のない女性が輝ける世界。女性の憧れであるバービーの象徴的存在「定番バービー」は、終わることのない楽しい日々や笑顔しかない仲間たちと共に平和で変化のない生活を送っていた。ある日定番バービーが自身の死について考えると、それまでの生活は一変してしまう。美しかった身体は衰え、おもちゃであるはずの身の回りの物も退化し始めたのだ。定番バービーは街に住む「変てこ」のアドバイスを受け、人間界とバービーランドの間にできた裂け目を塞ぐため、ボーイフレンドのケンと共に人間界にいる自身の所有者に会いに行く。自分は人間の女性達の憧れで、ヒーローだと思っていた定番バービーだったが、人間界の現実は彼女が思い描いていた理想とはかけ離れていた。夢も希望も打ち砕かれ、出ないはずの涙まで出てきた定番バービーを彼女を再び箱の中に戻して存在を隠蔽しようとするマテル社の魔の手が忍び寄る。逃げ惑う彼女を助けたのは、大人になった自身の所有者とその娘だった。マテル社の追手から逃れるため、定番バービーは母娘と共にバービーランドに戻るのだが、そこは人間界の男性社会に影響を受けたケンによって変えられた男性主義社会「ケンダム」と化していた……。
ストーリー・オブ・マイ・ライフ、レディ・バードのグレタ・ガーウィグ最新作。マーゴット・ロビー主演で、世代を超えて今もなおアメリカを中心に愛されるバービー人形の実写化映画。パステルカラーの街並みで、何度も連呼されるバービーの名前に、一瞬疲れてる時に見る夢かと錯覚するほどの世界笑
ストーリーは人魚姫から引用したと思われる部分が多く、「2001年、宇宙の旅」や、「プライベートライアン」のオマージュや、バービーの会社をネタにしたり、か弱い女にホイホイ釣られる男の脆さをつくなど、濃度の濃いブラックジョークに笑いながらも身をつままれるような気持ちになった男性陣も少なくないのでは(特に、映画好きの男にはとりあえずゴッドファーザー語らせとけ、は絶妙な所を突いている笑)そこへ巧妙に隠された現代に蔓延る男性主義社会への風刺や、女性の自立に対する思いも込められた、社会派映画としての一面も覗かせている。
個人的にはケン達が踊るシーンでは、昔見た武富士のCMを思い出したのが印象的。当CMの中で流れる「本当に五分と五分か〜?」という曲と、ケン達の思いが奇しくもリンクしてるのがまた面白い笑
本作には真の格差なき社会を目指すという強いメッセージを感じただけに、原爆をネタにしたアメリカ人の悪ふざけばかりが話題となってしまったのが残念でならない。