笑えるバカ映画のガワをかぶりながら難しいテーマを語るところがかなり今風のエンターテイメント映画で、感覚的には一昨年の『フリー・ガイ』に近い映画で、作品の構造やテーマを含めて似通ったところがかなりあると感じた。
この映画を素直にフェミニズムを賞揚するタイプの映画として観る向きもあるとは思うが、この映画がフェミニズム的な理想の楽園であるバービーランドから主人公のバービーが追放されるという失楽園的構造をとっていることから考えてもそう単純な話ではないということがわかる。
例えば洗脳されたバービーを女性の苦悩を語って聞かせることによって「目覚めさせる」といういかにもな場面も、それがあくまで架空の理想郷であるバービーランドでのみ通用する理屈として描かれていて、主人公のバービーの「本当の自我の目覚め」との対比でみるとかなり辛辣な含意と見ることができる。
これはかなり極端な見方かもしれないが、この映画の暗に言わんとしていることの一つはエコーチャンバー的な理想的空間に閉じこもって自陣にとって都合のいいだけのお人形遊びから卒業して、不都合な現実とも向き合ったうえで「人間」をやっていこうという話であり、ある意味ではこの映画が引き起こす議論を先回りして批判しているという所もあると思う。
