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バービーのKHのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
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何かと物議を醸した「バービー」を鑑賞。ずっと前から気になっていた作品。
鑑賞前の予告から既に、バービーの世界観を再現したセットやコンセプト、そしてなんと言ってもマーゴット・ロビーに期待をしていた。
だからこそ鑑賞後は落胆した。映画自体のポテンシャルは凄く高いが、浅くて陳腐なメッセージ性が明らかにこの映画の質を落としていて、正直もったいなく感じる。
型にはまった表現を使うなら、女性の解放思想であるフェミニズムと、近年のリベラル叩きに対応し耳にするようになった女性嫌悪(異性間または同性間にも)などの感情が映画の中で表現している。
最初はその鋭さに少し期待したが序盤20分でそれは終わり終盤まで殆ど平行線になる。(あの娘の現代的な鋭さをもった饒舌さをもっと活かして欲しかった)
女性視点から見たまだまだ生きにくい社会と、男性視点から見た少しづつ肩身が狭くなっていく社会との両方が表現されている点は面白いが、問題提起しまくった挙句に特に終着点が無く、「自分らしく生きよう」とありきたりな映画になっている印象。
よってメッセージ性は十分過ぎる程あるが中身は空っぽな気がする。
あとギャグも定期的に挟むが正直いって、笑う1歩手前感がありムズムズする。
本質的なフェミニズムではなくこの手の話題や議論を呼ぶような「フェミニズム」、またはそれに対応して反対するような考えは水掛け論にしか感じられなく、それぞれのポジショントークに陥いるため、この手の話題を扱う作品は逆に分断を煽る事が多い。
それでもやっぱりこの映画がアメリカで大ヒットすることは分かる。
ただ中身はやはり「もう一歩感」が否めない。そしてその陳腐なメッセージ性のせいで、テンポが悪くなっている。主張したいメッセージを登場人物にダイレクトに吐かせることは作りてのエゴではないか。

鑑賞後色々考えたが、この映画は分断をただ煽ると言うより、そんなヤツらを全員バカにしてる感じがする。
バービーをどう解釈すれば良いかはずっと迷ったが、この映画は全てポジションからの視点を少しづつぼかしてる感じがする。その点で今まで出会った映画で1番難しいかも。
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