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バービーのRickのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.3
 「女の子用のおもちゃ」といえば赤ちゃんの人形くらいしか無かった頃に、突如現れたバービー人形は決定的に全てを変えた。どんな職業にも就けるし、何にだってなれると。しかしそれから時代は下り、価値観も移ろい、その都度マテル社も変わろうとしてきたが、むしろバービー人形はジェンダー性のステレオタイプになってしまった。バービーのパートナーであるところのケンは、ただバービーのパートナーでしかないまま。試行錯誤の中で生み出された新しいキャラクターも、売れなければ廃番に。そんな状況下で作られた今作が、ただ愉快で明るく楽しいだけの作品になっているはずがない。しかもあのグレタ・ガーウィグとマーゴット・ロビーのタッグで。
 もちろん今作は「フェミニズム映画」と呼ばれるような一作であり、「女性」の解放を打ち出している。しかし同時並行でパトリアキーからの「男性」の解放も行っている。想定以上に複雑に「男女」の枠組みの入れ替えを行っているため、見失いそうになってしまったが、何よりも「ホモソーシャル」に対する強烈な批判を感じた。別に「男性」のホモソーシャルだけでなく、「女性」のホモソーシャルにだって、その矛先は向けられている。とにかく同質で単一的かつ排外的なものにとらわれることによって、見失ったり失ったりするものやことがたくさんある。属性に縛られず、一個の人間存在として、他者と向き合っていこう。その先にこそ、きっと目指すべき未来が待っているのだと、優しい目線で語りかけてくれているようだった。改めてこの有害な「ホモソーシャル」に自分が染まっていないか、自省するための時間をもらったような気がする。
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