筆圧の濃い映画だなと思った。楽曲の楽しさ、バービーの世界観の華やかさで誤魔化している本音の部分がペンが折れるほどの筆圧で感じた。これまでのグレタの作品で描かれていたものとはニュアンスが大きく異なり、その筆圧は歌ではシャウトで、手紙では筆圧で表すことがあるが、映画ではこうして描くのかとその強さに関心していたと同時にいつもとはちょっと違うなと思った。
これはジェンダーやフェミニズムなんていう簡単な言葉では表せない、人間がこれまで培ってきた社会構造への"違和感"の映画だと感じた。誰が悪で、どれが正義なんて簡単なものでは描ききれない。みんな間違いながらここにいるのだから。
その"違和感"に気付くことは、本当はしんどいことかもしれない。自分が何者で、どうしてしんどいことまで考えなくてはいけないのか、楽しいだけではいけないのか。たとえ誰であっても、そこへ向き合うことの大切さを終始伝えていたように感じた。
僕らはバービーであって、ケンでもある。"何者"でもない生まれてから死ぬまでの自分の人生。確かな一歩を少しずつ歩んでいきましょう。
